今回は適応障害の基礎知識と原因から治療方法について解説します。
適応障害とは?

適応障害というワードはメディアや著名人の告白などでうつ病と同じくらい広く知られるようになりました。
適応障害とはうつ病に非常に似たこころの病気のため、しばしばうつ病と適応障害の違いって何?と思うかもしれません。
そもそも適応障害とは何か。適応障害とは、ストレスが原因で生じるこころの病気です。
もう少し具体的に言うと就職や進学、結婚や離婚などのようなストレスに適応できずに抑うつ気分が生じて日常生活に支障をきたす、病気のことです。
適応障害というのは明確な「ストレス」があり、そのストレスによって症状が引き起こされるこころの病気なのですね。
例えばAさん男性22歳のケースをお話いたしますが、Aさんは元々マイペースな性格だったのですが、仕事は営業で相手のペースに合わせないといけなくて仕事になじめなく、ミスマッチだったと後悔しはじめだんだんと抑うつ気分や不安感に襲われるようになります。
次第に仕事を休みがちになったため、心療内科を受診すると適応障害と診断されました。このケースはよくあるケースのひとつですね。
適応障害の症状の特徴としては抑うつ気分と不安感が強いことがあげられます。
適応障害といえばこういう症状の特徴がある、というものは特になく軽度のうつ病の症状も抑うつ気分や不安感が長く続いたりするので軽度うつ病とかなり似ています。
適応障害の抑うつの症状は、なんとなく気分が落ち込む、憂鬱な気分が続くという感じです。
ちなみに、原因となるストレスから3か月以内に抑うつの症状が出ると言われます。
適応障害の不安感の症状は、楽しい事があったり、ストレスが絡まない状況の中では多少は気分が晴れますが、基本的には不安な気持ちが1日ずっと続いている感じです。
適応障害は抑うつ感と不安感が特徴的ですが、うつ病程抑うつ感は強くないし、不安障害ほど不安感が強いわけではありません。
だからしばしば心療内科に受診すると精神科医によってはうつ病程強いうつ感はないし、不安障害程不安感もつよくない、そういう場合に適応障害と診断することが多いという話もあります。
それを聞くと「なんだそれ、適当なんじゃないか」と思われることでしょう。
しかしながら、うつ病も不安障害も適応障害も正確に判断することは特に最初の診察だと難しい面もあるわけですね。なので正しく診断されたい場合はしばらく様子をみて受診してもらうと良いでしょう。
適応障害の症状のタイプ

適応障害の症状のタイプは大きくわけると4つあります。
1つめは抑うつ気分が強いタイプで、これは憂うつ感や涙もろさ、絶望感、思考力集中力の低下などが主な症状です。
2つめは不安が強いタイプで漠然とした不安感に襲われる。災害とか病気とか死について心配し過ぎたりするのが主な症状です。
3つめは不安と抑うつ感の混合タイプで抑うつ気分と不安感がどちらも生じることもあります。
4つめは行動に問題が出るタイプで、元々、大人しい性格だった人が急に荒々しい性格になったり、暴力的になったり、反社会的な行動をする場合もあるのです。
適応障害の原因
結論から言うと適応障害の原因はストレスです。
生きていればストレスから切っても切れない関係です。ストレスが0というのはあり得ないわけですね。
なので人は皆、ストレスがあった時にどうすかというとストレスを解消するわけです。
例えば、嫌な上司がいて、散々説教されてイライラしているのであれば同僚と飲みに行って愚痴を言い合うとか、カラオケ行って大声で歌うとか、そういう風にストレスを対処しているわけです。
適応障害になりやすい人はストレスを上手に対処するのが苦手な人が多いのです。
人によっては、そのストレスに気付かずにいることもあるわけですね。つまり、ストレスなのにストレスと感じていないということ。
ストレスってネガティヴなイメージがありますが、ポジティブなことでもストレスになることがあります。
例えば、昇進や結婚。これは一般的に見れば良い事なのでストレスなんてたまらないと思うかもしれませんが実はけっこうストレスなのですね。
日常生活のストレスってどういうものか、調査した研究では1番のストレスは配偶者の死だったのですね。
まぁこれはなんとなく理解できるでしょう。実は、この調査で所謂「良い出来事」である昇進や結婚はトップ10位にランクインしているのです。
というように人は知らず知らずのうちにストレスを溜めている可能性があるわけでそのストレスが溜まり過ぎてしまうと心が壊れてしまう、つまり適応障害になるということなのですね。
適応障害の治療

結論から言うと、治療はストレスから離れることとカウンセリングを受けることこの2つになります。
ストレスから離れることですが、まずは自分のストレスの原因をつきとめることです。
突き止めたならば、ストレスから離れられるか検討し、難しいようであれば極力距離をおけるように考えていくことが望ましいです。
2つめのカウンセリングを受けることですが、適応障害の人って往々にしてストレス対処が苦手だったりします。
適応障害の発症の原因はストレスですがストレスをどう対処するか、対処する方法を身につけていくことが大事なわけです。
カウンセリングではまず気持ちの整理をして、その上でストレスをどう付き合っていくか一緒に考えて、より生きやすい方法を考えていくわけですね。
軽度の適応障害であればこの2つでOKですが、重度になると薬物療法で服薬も必要となります。抗不安薬や抗うつ薬を処方されることもあります。

公認心理師・臨床心理士。Heart Life~こころの悩み相談所~室長。
2015年横浜国立大学大学院臨床心理学専修。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、都内心療内科クリニックや都内カウンセリングルームの勤務を経て2020年6月に開業。「カウンセリングを身近なものにしたい」という考えの元、現在はYouTubeやTikTok、TwitterなどSNSでも精力的に発信。専門は自己肯定感・うつ病・適応障害。