アダルトチルドレンは幼少期の家庭環境によって深い心の傷を負い、大人になってからも人間関係や自己肯定感に悩みを抱え続ける人々です。アダルトチルドレンとの関わり方は、時に戸惑いや難しさを感じるものです。
本記事では、アダルトチルドレンの特徴や関わりが難しい理由を紐解き、適切な接し方のポイントを解説。また、関わる側も疲弊しないためのセルフケア方法も紹介します。
そもそもアダルトチルドレンとは?
アダルトチルドレンとは、子ども時代に育った家庭環境の影響で、大人になっても心理的な生きづらさを抱えている人々を指します。虐待や育児放棄、過干渉や支配的な親の存在など、機能不全な家庭で育った経験が原因となることが多いです。
アダルトチルドレンは正式な診断名ではありませんが、トラウマや心的外傷が影響し、自己肯定感の低さや人間関係での困難さを抱えています。過去の経験に縛られ、感情をうまくコントロールできない、他者に依存しやすいといった特徴が見られます。
アダルトチルドレンの特徴
アダルトチルドレンには、子ども時代の家庭環境で培われた性格傾向や行動パターンがあります。
- 自己批判が激しい
- 責任感が強い
- 親密な関係を恐れている
アダルトチルドレンに見られる代表的な特徴を見ていきましょう。
特徴①自己批判が激しい
多くのアダルトチルドレンは、自分は不十分であり、さらに頑張らなければいけないと感じています。
幼少期に「期待に応えなければ愛されない」と学んでしまった結果、どれだけ努力しても自分を肯定できず、過度な自己批判を繰り返します。他者から褒められても素直に受け入れられず、失敗すると自分を責め続ける傾向があるでしょう。
特徴②責任感が強い
幼少期に親や家族の期待を背負って育ったアダルトチルドレンは、家族の崩壊を防ぐため、自分のことを後回しにしてでも他者の期待に応えようとしてきました。
しかし、その責任感は「認められたい」「嫌われたくない」というおそれからきたものです。アダルトチルドレンの責任感は、自分の気持ちを犠牲にして成り立っています。
特徴③親密な関係を恐れている
アダルトチルドレンは、幼少期に大切な人から傷つけられた経験や裏切られた記憶がトラウマとなり、「また傷つくかもしれない」「捨てられるのではないか」という不安を抱えています。
人との距離を一定に保とうとし、必要以上に踏み込まれることを避ける一方で、
必要以上に相手に依存し、共依存関係に陥るケースも見られるでしょう。
アダルトチルドレンとの関わりが難しい理由
アダルトチルドレンとの関わりに悩む人は少なくありません。
- 感情のコントロールが難しい
- 共依存関係に陥りやすい
- 信頼関係の構築に時間がかかる
ここでは、アダルトチルドレンとの関係が難しく感じられる上記の理由を解説します。
感情のコントロールが難しい
アダルトチルドレンには、幼少期に「感情を表すと怒られる」「本音を言っても受け入れてもらえない」と学んだ結果、感情を抑え込む癖がついている方が多いです。
しかし、その抑圧は限界を迎えると突発的な怒りや悲しみに変わり、周囲を驚かせることがあります。反対に、感情表現を極端に避け、冷たい印象を与えるケースも見られます。
共依存関係に陥りやすい
アダルトチルドレンは、幼少期に「自分が誰かの役に立たないと存在価値がない」と思い込んでしまい、大人になっても「相手に必要とされることで安心感を得る」行動を取ります。
しかし、その結果として相手に依存しすぎたり、逆に相手を必要以上にコントロールしようとすることもあります。相手が少し距離を取ろうとすると強い不安を感じ、過剰に反応してしまうことも少なくありません。
信頼関係の構築に時間がかかる
アダルトチルドレンは、幼少期の経験から「どうせ裏切られる」「信じても傷つくだけだ」という思いが強く、心を開くことに慎重です。どれだけ優しく接しても、相手の好意を素直に受け取れず、「本心ではないのでは?」「いつか見捨てられるのでは?」と疑ってしまうのです。
アダルトチルドレンへの接し方
アダルトチルドレンと関わる際には、下記のように、相手の傷ついた心を理解し慎重な対応が求められます
- 相手を認めて、良いところを褒める
- 距離感を大切にする
- 嘘や冗談に気をつける
- 期待を押しつけない
- 変えようとは思わない
- 自立を促す
ここでは、アダルトチルドレンと接する際に心がけるべきポイントを探っていきましょう。
相手を認めて、良いところを褒める
アダルトチルドレンは自己肯定感が低く、自分に自信が持てないことが多い傾向を持ちます。
そのため、相手のよいところを見つけて積極的に褒めることが重要です。些細な言葉でも、相手の心に安心感を与えるでしょう。
ただし、表面的なお世辞は逆効果です。相手は本心ではないのではと疑ってしまうため、心から思ったことを伝えるようにしましょう。
距離感を大切にする
アダルトチルドレンは、近づきすぎると不安を感じ、遠すぎると見捨てられたと感じることがあります。そのため、適度な距離感を保つことが大切です。
必要以上に干渉せず、かといって無関心にもならない「ほどよい距離」を意識しましょう。相手の様子を見ながら、求められたときにそっと寄り添う姿勢が安心感を与えます。
嘘や冗談に気をつける
アダルトチルドレンは、過去に大切な人から傷つけられた経験を持っていることが多く、嘘や軽い冗談にも敏感です。「どうせ自分はまた傷つけられる」と感じさせないためにも、言葉選びには注意しましょう。冗談のつもりでも深く傷つき、不信感を抱く可能性があります。
アダルトチルドレンとの信頼関係を築くには、相手の心を尊重しながら接することが重要です。常に正直であることが理想ですが、ときにはその正直さが相手を傷つけることもあります。大切なのは、思いやりを持って言葉を選び、相手の気持ちに寄り添った伝え方を心がけることです。
無理に取り繕うのではなく、優しさをもって本心を伝えることで、相手も安心し、信頼関係が深まっていくでしょう。
期待を押しつけない
自分本位な期待を押しつけることは、アダルトチルドレンにとって大きなプレッシャーになります。
幼少期に親からの期待を背負い続けてきたため、期待されると応えなければいけないと感じ、心が疲弊してしまいます。相手のペースを尊重することが重要です。
変えようとは思わない
アダルトチルドレンは自分自身に対しても焦りや強いプレッシャーを感じているため、外部からの要求は大きなストレスとなります。大切なのは、ありのままを受け入れる姿勢でいることです。
本人がサポートを必要とするときに手を差し伸べることが、癒しと回復につながるでしょう。
自立を促す
アダルトチルドレンは、他者に依存しやすい傾向があります。しかし、過度な依存はお互いにとって負担を増大させます。
自立を促すためには、できることは自分でやってみるように支援することが大切です。
小さな成功体験を積み重ねることで、自信や自立心を育むことができるでしょう。本人のペースを尊重しながら声をかけ、少しずつサポートしてみてください。
負担を軽減するためのセルフケア方法
アダルトチルドレンとの関わりは、相手を思いやるあまり、自分自身が精神的に疲れてしまうことも少なくありません。
相手の感情に寄り添い続けることで、無意識のうちに自分自身が消耗し、日常生活に支障をきたすこともあります。関わる側も次のようなセルフケアを行い、心の健康を保つことが大切です。
- 信頼できる人に向けて感情を出す
- 自分の時間を大切にする
- 専門家によるサポートを活用する
ここでは、アダルトチルドレンと接する際に役立つセルフケア方法を紹介します。
信頼できる人に向けて感情を出す
アダルトチルドレンと接する中で溜まったストレスや不安は、友人や家族などの信頼できる人に話すことで軽減されます。
家族や友人に心の内を打ち明けたり、日記に書き出すだけでも気持ちが整理され、精神的な負担を和らげられます。感情を溜め込まず言葉にすることで自分の本音に気づき、冷静に物事を考えられるようになるでしょう。
自分の時間を大切にする
誰かをサポートし続けると、自分自身の時間が削られ、心に余裕がなくなります。
意識的に1人の時間を確保し、趣味やリラックスできる活動を取り入れることで、心身をリフレッシュできます。短時間でも、自分だけの時間を持つことを心がけましょう。
専門家によるサポートを活用する
感情的な負担が大きいと感じたときは、心理カウンセリングやセラピーの利用も選択肢の1つです。
専門家に話を聞いてもらうことで、自分自身の気持ちが整理され、効果的な関わり方を学べます。負担を1人で抱え込まず、必要に応じて専門的なサポートを受けることが、自分自身を守るためにも重要です。
まとめ
アダルトチルドレンは、幼少期の家庭環境が原因で、大人になっても心理的な生きづらさを抱える人々です。感情のコントロールが難しく、共依存に陥りやすいことや、信頼関係の構築に時間がかかる点も関わりを難しくしています。
関わる側も心の負担を抱えやすいため、信頼できる人に感情を話す、自分の時間を大切にする、専門家のサポートを活用するなどのセルフケアが必要です。
本人のペースを尊重しながら、温かく寄り添うことを心がけてください。
Heart Life こころの悩み相談所では、アダルトチルドレンとの接し方でお悩みの方をサポートしています。適切な関わり方を学び、お互いを尊重した健全な関係づくりをするためのお手伝いいたします。一人で抱え込まずに、ぜひご相談ください。
この記事の監修者

横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。
<公式SNS>YouTubeアカウント:「心理カウンセラー【臨床心理士】がうつ病について語るCh」
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