カウンセリングで「話すことがない」と感じる場合はどうすればいいのか?臨床心理士が解説

このコラムでは、カウンセリングを継続で受けていてもだんだん話すことがない、と感じている方へ向けて対処法を現役の臨床心理士が解説していきたいと思います。 

カウンセリングで話すことがないと感じている場合

カウンセリングを受けてみようと考えて、定期的に受けてみたものの、数回のセッションを経て

「何を話していいかわからない」

「話すことがない」と感じる方は一定数いらっしゃいます。

そんなとき「カウンセリングって本当に意味があるのか」と疑問に感じてしまって

カウンセリングにモチベーションが上がらず場合によってはカウンセリングを中断する方もいらっしゃったりします。

   

自分自身と向き合うことへの「抵抗」

最初カウンセリングを受けるときは、1週間ないしは2週間に1回受けることになります。

その中で1週間とか2週間たって「特に何もない」と感じる場合は、一体どういうことが生じているのでしょうか。

カウンセリングというのは自分自身と向き合う場所なのですが「話をすることがない」と感じている方は

自分と向き合うことへの「抵抗」であることが多いのです。

1~2週間の間で気持ちの変化がない、ということはあり得ません。

調子がいいときもあれば悪いときもあるはずです。

カウンセリングを受けている方は、その波が強かったり、感受性が豊かだったりする人ですから、必ず気持ちの調子が良いとき悪いときがあるはずなのです。

しかし、「カウンセリングで話すことがない」と感じるのは、自分自身のこころと向き合うことに恐れや不安などがあるからこそ

1-2週間の変化を感じていないことが挙げられます。

つまり実は話すことはたくさんあるはずなのです。しかしそれに気づいていない。気づいていない、ということは実はなくて

自分の心が無意識に「自分のこころの変化に気づかないように」しているだけなのです。

いわば心の「防衛本能」が働いている証拠。つまり、自分と向き合うことを避けるためなのです。

  

抵抗はなぜ生まれる?

ではなぜ自分と向き合うことへ抵抗が生まれるのでしょうか。

自分と向き合う場であるカウンセリングでは自分の良いところも悪いところもひっくるめて向き合うことになるのですが、

自分の悩みって実は自分の見たくないところ、自分の「悪いところ・課題になるところ」と向き合わざるを得ないのです。

   

抵抗が生まれるのは、その自分の向き合いたくない部分と向き合いたくないから、生じていると考えられます。

もしそうなら、自分に抵抗が生まれるということはカウンセリングが進んでいないのではないか?と思いますよね。

確かに、進んでいないと感じるかもしれません。しかし、実はカウンセリングにおける抵抗というのは、むしろカウンセリングが進んでいるという証拠でもあるのです。

  

抵抗が生じたときには、選択肢として

その抵抗と向き合うのか、それともそこから逃げるのか、このふたつの選択を迫られる。

ここでどうするか、考えていくこともカウンセリングを進めていくうえでは非常に重要なことになるからです。

つまり、ここをどう乗り切れるか、で今後のカウンセリングセッションが実りのあるものになるのか、どうかがかかってくるのです。

カウンセリングで話すことがなくなったときの対処法

ではカウンセリングで話すことがなくなったと感じた場合はどうすればいいのでしょうか。

まず一番最初にできることは、記録をつけることです。

カウンセリングセッションの中で、私は最初のセッションでよく「記録をつけてください」と伝えます。

よくカウンセリングで使われたり、リワークと言われる復職支援のグループワークなどでよく使われる、「生活行動記録表」というものがあります。これは、一日のスケジュールを書いて、その1日の中で気持ちの調子を点数化していくのですが、定期的にカウンセリングを受けるのであれば、是非記録をつけてみてください。

それを毎日つけてもらって、次のセッションで話していくと、気持ちが上がっているときと下がっているときはどういうことが起こっているか、ということが見えてくるので、意外にも気づけないことが気づけることがあります。

記録を持っていくだけでも、話のとっかかりになることになり、そこから自己洞察が深まることがあります。

そして、これが一番重要ですがカウンセリングの中でカウンセラーに一度、「話すことがない」ということを相談してみてください。

そこから自分自身、なぜ「抵抗しているのか」ということが見えてきます。

カウンセラーに「話すことがない」と言うことは、少し話しにくいかもしれませんが、敢えてしてみると良いでしょう。そこから何かしらの手がかりというか、カウンセラーからの見立てなど、より深く自分のことを自己洞察できるようになると思います。

これをすることは精神的なエネルギーが必要だとは思いますが、これをカウンセリングの中で話ができると、自己洞察が深まり、

とても実りのあるカウンセリングになると思います。

もし、話しにくいなぁと感じているのであれば、それ自体も自分自身の問題点や課題点であることが多いので「話にくい」ことも是非、カウンセラーに「話して」みてください。カウンセラーは決してそのことばを否定することはしませんし、そこからいかに自己洞察を深めるか、考えています。

当ルームではできるだけカウンセリングを身近にすることをコンセプトにしたカウンセリングルームです。東京(渋谷・新宿)のカウンセリングならHeart Life こころの悩み相談所へ

この記事の監修者

丸田 英世

Heart Life代表・室長

<資格>

公認心理師[国家資格](No.7710) 臨床心理士(No.31071)

<所属学会>

日本臨床心理士会

<略歴>

横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。

<公式SNS>

YouTubeアカウント:「心理カウンセラー【臨床心理士】がうつ病について語るCh」
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