「うっかりミスが多い」「集中力が続かない」など、ADHDの特性による困難に悩んでいませんか?
専門機関に相談する前に、まずは自分でできることから試したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、ADHDの特性とうまく付き合うための具体的な対処法を16個紹介します。
すぐに実践できるものから生活習慣の改善、思考の整理術まで、日常で役立つ方法をまとめました。
ぜひご自身に合った方法を見つけ、心の負担を軽くする参考にしてください。
ADHDを自力で克服するために今すぐできる対処法
思考がまとまらず何から手をつければよいか分からないときは、一度心と体をリセットすることが大切です。
脳が混乱している状態では、普段できることもうまくこなせません。
ここでは、すぐに試せる4つの簡単な方法を紹介します。
- 目の前のタスクを1つだけにする
- 5分だけ静かな場所で目を閉じる
- 考えや感情を紙に書き出す
- 軽いストレッチで体を動かす
これらの方法は、あなたが混乱しそうになったときに、落ち着きを取り戻すきっかけを与えてくれます。
目の前のタスクを1つだけにする
多くの課題を前にして混乱しそうになったら、取り組むべきことを1つに絞りましょう。ADHDの特性があると、複数のタスクを同時に意識すると優先順位がつけにくくなり、思考が停止してしまうことがあります。
あえてほかの情報を遮断し、今やるべきことだけを考えるのがコツです。
たとえば「メールを送る」「書類を準備する」という2つの作業があるなら、書類は机の引き出しにしまいましょう。
そして、メール作成だけに集中します。
タイマーを15分セットするのも有効です。
1つずつ着実にこなすことで、パニックを防ぎながら作業を進められます。
5分だけ静かな場所で目を閉じる
周囲の刺激で集中力が途切れたり、気持ちがざわついたりしたときは、短い時間でよいので心を休ませましょう。
ADHDの特性の1つに、音や光といった外部からの刺激に敏感な点があげられます。
そのため、自分でも気づかないうちに脳が疲れ切ってしまうことも少なくありません。
会議室や休憩室、あるいはトイレの個室でも構いません。
静かな場所でそっと目を閉じて、ゆっくりと深呼吸を繰り返してみてください。
たった5分間のクールダウンが、次の行動に必要な集中力を取り戻す助けとなります。
考えや感情を紙に書き出す
頭の中がごちゃごちゃして整理できないと感じたら、思いつくままに紙へ書き出してみてください。
やるべきことや不安、アイデアなどが頭の中で混ざり合うと、私たちはうまく思考できなくなります。
それらを一度、紙の上に出して「見える化」するのが目的です。
ノートでも付箋でも構いません。
「〇〇さんに電話する」「なんだか焦っている」など、きれいに書こうとせずに、単語や短い文章で書き出していきましょう。
この簡単な作業によって、驚くほど思考が整理され、次に行うべきことが明確になります。
軽いストレッチで体を動かす
長時間同じ姿勢で集中力が落ちてきたときや、そわそわして落ち着かないときは、軽い運動を取り入れるのがおすすめです。
体を動かすと脳への血流が促され、注意力や意欲に関わる神経伝達物質の働きが活発になります。
本格的な運動である必要はありません。
席に座ったまま背筋を伸ばしたり、肩を回したりするだけでも十分です。
可能であれば、少し歩いて飲み物を買いに行くなど、数分間の休憩を挟むとよいでしょう。こうした少しの動きが、心と体の緊張をほぐし、気分をリフレッシュさせてくれます。
ADHDを自力で克服するための具体策「生活習慣編」

ADHDの特性とうまく付き合っていくためには、日々の土台となる生活習慣を整えることが欠かせません。
規則正しい生活は体内時計を安定させ、集中力の向上にもつながります。
以下にあげる4つの生活習慣は毎日を安定させ、二次障害の予防・改善にも役立ちます。
- 毎朝同じ時間に太陽の光を浴びる
- 糖質の多い間食や飲料を避ける
- 軽い有酸素運動を習慣にする
- 就寝1時間前からデジタル機器を断つ
これらを少しずつでも習慣にすることで、ADHDの困難に左右されにくい安定した生活の基盤を作れます。
毎朝同じ時間に太陽の光を浴びる
毎朝決まった時間に起きて、太陽の光を浴びる習慣をつけましょう。
私たちの体には、約24時間周期の体内時計が備わっています。
朝日を浴びることで、この体内時計がリセットされ、心身の活動リズムが整うためです。
睡眠に関する悩みを抱えやすいADHD当事者にとって、これは大切な習慣といえます。
起きたらまずカーテンを開け、窓際で数回深呼吸をしてみてください。
週末も含めて毎日同じ時間に行うのが理想です。
この朝の習慣が、夜の寝つきの良さや日中の気分の安定につながります。
糖質の多い間食や飲料を避ける
お菓子やジュースなど、糖質を多く含むものの摂り方には少し注意が必要です。
一度に多くの糖質を摂取すると、血糖値が急上昇したあとに急降下します。
このような血糖値の乱高下は、集中力の低下やイライラ、強い眠気を引き起こす原因となりかねません。
これはADHDの症状を悪化させる一因にもなります。
甘いものが欲しくなったら、ナッツやチーズ、無糖のヨーグルトなどを選ぶのがおすすめです。
飲み物は、水やお茶を基本としましょう。
血糖値を安定させることが、心の安定にも直結します。
軽い有酸素運動を習慣にする
ウォーキングや軽いジョギングなど、軽度な有酸素運動を生活に取り入れましょう。
有酸素運動は、注意力や衝動性のコントロールを担う脳の「前頭前野」という部分の働きを高めることが知られています。
定期的な運動は、脳にとって天然のサプリメントのようなものだと考えてください。
まずは「通勤時に一駅分歩く」「寝る前に15分だけ踏み台昇降をする」など、無理のない範囲で始めるのが長続きのコツです。
楽しめる運動を見つけ、それを習慣にすることで、衝動性や多動性が緩和される効果が期待できます。
就寝1時間前からデジタル機器を断つ
質のよい睡眠を確保するために、寝る前の1時間はスマホやPCに触らない時間を作りましょう。
これらの画面が発するブルーライトは、眠りを誘うホルモンである「メラトニン」の分泌を抑制してしまいます。
その結果、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりするためです。
就寝の1時間前になったらアラームが鳴るように設定し、それを合図にスマホなどを手の届かない場所に置いてみてください。
残りの時間は読書をしたり、落ち着いた音楽を聴いたりして、心と体をリラックスさせる時間に充てるのがおすすめです。
ADHDを自力で克服するための具体策「日常生活編」
ADHDの特性である不注意や忘れっぽさは、日常生活の仕組み作りでカバーできます。
記憶力に頼るのではなく、忘れようがない状況を意図的に作り出すことが肝心です。
ここでは、うっかりミスを防ぎ、頭の負担を軽くする4つの工夫を解説します。
- すべての持ち物の定位置を決める
- やるべきことをリストで可視化する
- リマインダーアプリを徹底的に活用する
- 玄関のドアに持ち物リストを貼る
それぞれ見ていきましょう。
すべての持ち物に定位置を決める
「探し物が見つからない」という事態を防ぐために、すべての持ち物に「住所」を作りましょう。
注意がそれやすい特性があると、無意識に物を置いてしまい、あとから場所が分からなくなります。
物の定位置を厳密に決めておけば、記憶ではなく習慣で片付けられるようになるのです。
たとえば「鍵は玄関のトレイ」「財布は机の一番上の引き出し」のように具体的に設定します。
「使ったら必ずそこに戻す」というルールを徹底することで、探し物にかける時間とストレスを大幅に減らせます。
やるべきことをリストで可視化する
仕事や家事など、やるべきことは頭の中だけで管理せず、必ず書き出して見える化しましょう。
複数のタスクを記憶に頼って管理するのは、脳にとって大きな負担です。
紙や画面に書き出して外に出すことで、頭のメモリが解放され、目の前の作業に集中できます。
手帳やホワイトボードを使い「報告書を提出する」「牛乳を買う」といったことまですべて書き出してください。
完了した項目を線で消していくと、達成感が得られて意欲の維持にもつながります。
リマインダーアプリを徹底的に活用する
スマホのリマインダー機能は、頼れる秘書になります。
数日後、数週間後の予定や締め切りを、常に覚えておくのは困難です。
デジタルツールは、あなたがほかの作業に集中していても、必要なタイミングで確実に知らせてくれます。
大事な会議の予定だけでなく「ゴミを出す」「〇〇さんに電話をかける」といった細かな用事も登録しましょう。
「1日前」「1時間前」「15分前」など、複数回通知するように設定するとさらに確実です。
玄関のドアに持ち物リストを貼る
忘れ物をなくすための最後の砦として、家を出る前に必ず目に入る場所にチェックリストを貼りましょう。
とくに忙しい朝は、うっかり大切なものを忘れてしまいがちです。
毎日必ず通る玄関のドアに物理的なリストがあれば、強制的に最終確認の機会を作れます。
紙に「スマホ」「財布」「鍵」「社員証」など、忘れてはいけないものを書き出します。
そして、目の高さに合わせてドアの内側に貼り付けてください。
ドアノブに手をかける直前に指差し確認する習慣をつければ、忘れ物を劇的に減らせます。
ADHDを自力で克服するための思考と感情のコントロール方法

衝動性のコントロールや感情の波も、ADHDの特性と付き合ううえでの主要な課題です。
行動や生活習慣だけでなく、自分の内面である思考や感情との向き合い方を知る必要があります。
ここでは、自分の心とうまく付き合うための4つの方法を紹介します。
- 感情的になったらその場を一旦離れる
- ネガティブな感情を言葉にして認める
- 自分を責める言葉を意識的に中断する
- 小さな成功体験を記録し見返す
これらの方法を身につけることで、日々のストレスを減らし、穏やかな心を保ちやすくなります。
感情的になったらその場を一旦離れる
怒りや焦りといった強い感情がこみ上げてきたら、意識的にその場から物理的に離れましょう。
ADHDの衝動性は、カッとなって後悔するような言動につながることがあります。
物理的な距離を取ることで、思考と感情の間に「間」が生まれ、冷静さを取り戻すきっかけになります。
たとえば、議論が白熱したら「少し頭を冷やします」と伝えて席を立つ、トイレに行くなどです。
これは逃げるためではなく、衝動的な反応を防ぐための大切なスキルです。
ネガティブな感情を言葉にして認める
不安や落ち込みを感じたときは、その正体不明の感情を言葉にしてみましょう。
漠然としたネガティブな感情は、放置すると頭の中でどんどん大きくなりがちです。
それを「言葉にする」ことで客観的に捉えられ、感情の力を弱められます。
ただ「モヤモヤする」で終わらせず、「明日のプレゼンが心配で、不安を感じている」のように具体的に言語化します。
「不安に思っても大丈夫」と、その感情の存在を一旦認めてあげることも心を落ち着かせるうえで有効です。
自分を責める言葉を意識的に中断する
ミスをしたときなどに「自分はダメだ」「またやってしまった」という言葉が頭に浮かんだら、意識してその思考を中断しましょう。
過去の失敗体験から、ADHD当事者は自己否定的な思考の癖がつきやすい傾向にあります。この癖は自尊心を低下させ、新たな挑戦への意欲を削いでしまいます。
自分を責める言葉が浮かんだら、心の中で「ストップ」と唱えてみてください。
無理に前向きな言葉に置き換える必要はなく、まずは否定的な思考の流れを断ち切ることが賢明です。
小さな成功体験を記録し見返す
どのような些細なことでも、自分ができたことやうまくいったことを記録する習慣をつけましょう。
ADHDの特性上、どうしても失敗したことに意識が向きやすく、自信を失いがちです。
意図的に成功体験に目を向けることで、自己評価のバランスを取り、自尊心を育てていきます。
専用のノートやスマホのメモ機能を使い「時間どおりに起きた」「忘れ物をしなかった」など、達成できたことを書き留めてください。
気分が落ち込んだときにこの記録を見返すと、努力を再確認できます。
まとめ:ADHDの特性を理解してあなたらしい人生を歩むために
ADHDの症状に悩む日々は決して楽ではありませんが、今回お伝えした方法を実践することで、確実に生活は改善します。
大切なのは1人で抱え込まず、必要なときには専門的なサポートを受けることです。
Heart Lifeでは、公認心理師・臨床心理士による専門的な心理カウンセリングを提供。
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この記事の監修者

横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。
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