このコラムでは、体調不良の時に無理しないほうがいい理由について臨床心理士的視点から解説していきたいと思います。
精神的な調子を敏感に捉える
最初に注釈として付け加えたいのはこのコラムで指す「体調不良」というのは、精神的な体調不良ということと定義しています。
今現在、体調不良を感じているけれどだからといってすぐに休むという行動ができる人は稀でしょう。
今でこそコロナ疑いのある場合は休んで良い雰囲気になってとてもよいですが、コロナ禍前は、インフルエンザでもない限りちょっとした風邪でもすぐに「休む」なんてことはしにくい風潮はあったと思います。
だから風邪でもなく原因不明のめまいや頭痛、倦怠感で休むなんて「もってのほか!」と思っている人の方が大多数だと思うのです。
業種にもよるでしょうが、確かに当日に欠勤されると周りの人の迷惑になることは事実だと思うし、特に精神的な体調不良になる人ってすごく真面目で勤勉な人が多いから周りの人に迷惑をかけたくないという気持ちが強いので余計に「休みにくい」と感じるのは当たり前なのかもしれません。
実際、精神的な問題によって引き起こされている体調不良というのは周囲の人に理解されないことが多いです。なんで理解されないかって、わからないからです。つまり、体験したことが無いからなんですよね。
うつ病は10人に1人が一生涯のうちに罹るこころの病気と言われていますが、
そう考えると1クラス30人いたとしてそのうちの2人しかならないということ。つまり後の28人はなったことがないから、こころの病気に対しての理解が乏しいというのはむしろ当然と思います。
そういう意味では、我々臨床心理士である専門家は一般の方にこころの病気について広く伝えていく義務があるなぁと痛切に感じるところではあります。
体調不良になったときに、注意してほしいのは、まずその体調不良を敏感に捉えること。
どういうことかというと例えば「あぁ自分は頭痛やめまいを感じているな、体調が悪いようだな」と自分の事を客観的に捉えるということです。
体調不良を感じているおよそ4分の3の人は自分の症状を客観的に捉えていないと言われています。自分のことを客観的に捉えていないと症状を放置してしまうことになり、症状が悪化する可能性もあるのです。
無理しない方がよい理由
体調不良の時は、よく「休みなさい」と言われる事があったりします。確かに理想は休むことです。だけれどなかなか難しいですよね。
それでも体調不良の時は無理しない方がいいのです。その理由は、結論から言うと症状が悪化する可能性があるから。
体調が悪いというのは、身体からのメッセージ、つまり「危険だよ!」というアラートでもあるわけです。「休んだ方が良いよ!」ということでもある。休んだり無理しないように過ごさないと、そのアラートを無視することになるわけです。するとどうなるか?身体はどんどんと蝕んでいくことになりかねません。
精神的な体調不良は放置しておけば「治るだろう」と思う人も実は多いのです。けれど、結論から言うとそれはあり得ません。
もし放置して治ったという人がいたならば、ほぼ100%の確率で環境調整をしたということだと思います。
無理をすると症状が悪化してしまい、本来なら軽度のうつ症状なのに、重度のうつになる可能性もある。重度のうつであれば、起き上がることもままならず、生活すら困難になることだってあるのです。だから大事なのは、無理をしないこと。立ち止まって考えてみてください。
「今、自分は無理していないか?」と。問いかけてみてください。そして生活習慣を振り返ってみてください。
ちゃんと眠れているか?
規則正しい生活ができているか?
ちゃんと食べているか?
振り返って気になる事があればまずはそこから少しずつで良いので変えていきましょう。きっと良い方向に進むと思います。
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この記事の監修者
横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。
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