パニック障害

パニック障害とは、強い恐怖感や不安感が特徴のこころの病気です。この記事では、臨床心理士がパニック障害とは何か?パニック障害の原因や治療法、具体的に改善した事例も併せて解説していきます。

パニック障害とは?

 パニック障害(パニック症)とは、「このまま死ぬかもしれない」というような強い恐怖感や不安感が生じ、様々な不快な症状が突然生じるパニック発作を繰り返すこころの病気です。

パニック発作の症状は、様々な現れ方をします。動悸や過呼吸・めまい、ドキドキする、冷や汗をかくなど発作的に身体症状に出ます。

パニック発作は、予期せぬパニック発作と状況準備性パニック発作があり、前者はパニック発作が起こる状況がいつでもどこでも起こりうるものであり、後者はパニック発作が起こりやすい状況がある程度わかっていることを言います。

こんな症状ありませんか?(チェックリスト)

・心臓がドキドキして脈が速くなる

・やたらと汗が出る

・息切れ、息苦しさを感じる

・手足や身体が震える

・めまいがする、ふらつく

・頭がボーッとする

・胸が痛くなる

・胸が圧迫されるような感じがある

パニック障害の症状

パニック障害の代表的な症状は「パニック発作」です。

パニック発作はこれといった病的な原因がないにも関わらず、

「心臓がドキドキして脈が速くなる」「冷や汗がでる」「息苦しさを感じる」など

複数の身体症状が同時に発作的に生じる症状を指します。

症状は、ほぼ同じタイミングで治まっていくと言われます。長くても30分程度で自然に収まっていくと言われます。現れやすい症状は人によって異なります。吐き気や嘔吐など消化器症状が強く表れる人もいると言われます。

パニック発作自体は、珍しいものではなく、実は10人に1人は障害のうち一度は経験しているとも言われます。

身体の症状

パニック発作は身体症状が強く出やすいですが、特に「過呼吸」はパニック発作でよくみられる症状です。

一般的に、不安や緊張した時には呼吸数が増えるのは身体に備わっている仕組みのひとつです。

十分に酸素を取り込むことで体の活動性を高めるしくみですが、呼吸数が増えすぎて過呼吸の状態になると、血液中の二酸化炭素と酸素のバランスが悪くなり、かえって身体がうまく動かせなくなり、息苦しさが強まることになり、さらに「息をしなければ」と思い、さらに息苦しくなり、不安が強まり、より過呼吸の症状を悪化させます。

過呼吸の症状が続くと、時に意識を失うこともありますが、「もっと吸おう」とならないために呼吸のペースが戻りやすくなります。

心の症状

パニック障害で代表的な症状は、広場恐怖です。これは、発作がないときも「また苦しい発作が生じるのではないか」という不安から時に外出することをためらってしまうことがあるのです。

発作を繰り返すうちに発作が起こった時と同じような状況が再現されるのを避けようとして、行動を抑制してしまうことにより、時に生活に制限や支障をきたしてしまう恐れもあります。

特に、公共交通機関、映画館、人込みや行列、橋やトンネル、家の外でひとりで過ごす状況などを恐怖の対象となりやすいと言われます。

ちなみに、パニック発作が繰り返されるうちに「またあの辛い発作が起きたらどうしよう」と思ってしまうことを「予期不安」と言います。時に強い予期不安は回避行動につながりやすく、生活に支障をきたしやすいと考えられます。場合によっては、周囲にすべて不安を感じるようになることもあり、外出することすら難しくなります。そのため、ひきこもりになり、それまでの生活ができなくなった自分に対して自責の念に駆られ、うつ状態になってしまうこともあるのです。

パニック障害の要因

パニック障害の大きな原因のひとつは、脳の過剰反応で症状が出やすくなっています。

パニック障害の人の脳は、様々な脳のセンサーが鋭敏で危険を察知する能力が非常に高いのです。

センサーが鋭敏なことは異常なことではありませんが、客観的にみて危険のない、むしろ安全なところでもわずかな変化を拾い上げて脳が警告を鳴らすため、危険じゃないところでも不安や恐怖を感じてしまうアンバランスな状態が続いてしまうのです。これが結果的に生活に支障をきたしてしまうのです。

その他、パニック障害になりやすい傾向のある人についてまとめてみました。

環境(生活スタイルの問題)

都会に住む人や喫煙者は発症率が高めであると言われることもあります。

遺伝的な要因

血縁関係の近い家族(第一親近者)にパニック症の人がいる場合、パニック障害になる確率は7.8倍になるという研究報告もあります。

男女差

理由は不明ですが、パニック障害は女性の方がやりやすく、有病率は男性の2~3倍と言われます。

年齢

パニック障害の障害有病率は1.5~2.5%と言われますが、65歳以上の有病率は0.1%と言われます。特に20代の発症が多くみられる傾向にあります。

パニック障害の治療について回復に向けて心がけること

パニック障害はただ休んでいれば自然に治るものではありません。まずは薬物療法とカウンセリング(認知行動療法)を主軸に生活面での取り組みも必須となります。

薬物療法

パニック障害の治療には抗うつ薬や抗不安薬が用いられます。

カウンセリング(認知行動療法)

薬物療法と並行して、パニック発作が起きる状況の分析や、避けている行動について少しずつ向き合えるように取り組んでいきます。

生活面での取り組み

パニック発作は自立神経系の働きと深く関連しています。不安や緊張を感じた時は、その感覚が大きくなる前に自分自身の心と体をリラックスさせるリラクゼーション法を身に着けていくことは大切です。

カウンセリングでの治療効果

カウンセリングでは、パニック発作が生じる場面について具体的に検討していき、少しずつパニック発作が生じないようにどうすればいいかカウンセラーと共に考えていきます。

また、不安や恐怖が沸き上がってきたときに、自分なりに落ち着かせるためのリラクゼーション法なども一緒に身に着けていけます。特にパニック障害には認知行動療法が有効だと言われています。

認知行動療法とは

パニック障害は脳の働き方(過度に不安や恐怖を感じる)によって生じる病気ですが、パニック障害の治療には認知行動療法が有効だと言われています。

パニック障害の認知行動療法では、本人がパニック発作のコントロールの仕方や対処の仕方を身に着けることや、回避している行動を克服する、例えば、パニック発作によって電車に乗ることが難しいようであれば、電車に乗れることを行動変容の目標として取り組んでいきます。

薬物療法と並行しながら、じっくり取り組んでいくことが良いでしょう。

当てはまる方は相談してください

・パニック障害を克服したい

・不安や恐怖を軽減したい

・自分なりのリラクゼーション方法を見つけてきたい

・認知行動療法を受けてみたい

上記のようにお考えの方は、一度カウンセリング(心理療法)をおすすめします。

その際は、認知行動療法に対応できる臨床心理士・公認心理師をお選びいただくと良いでしょう。

Heart Life~こころの悩み相談所~では、うつ病の治療のための心理療法をはじめ認知行動療法専門の臨床心理士や公認心理師が多数在籍しています。

当ルームのコンセプトは「もっと身近にカウンセリングを」。できるだけ気軽にカウンセリングを受けていただきたいという思いから、当日でのご予約も積極的に受付させていただいております。

パニック障害と似ている病気

パニック障害を呈する方は、その他こころの病気と併発することが多々あります。

社交不安症

人から見られたり、注目を浴びたりすることに対して強い不安や恐怖を感じてしまい、そのような状況になるとパニック発作を起こしやすくなります。日常生活を送るうえで大きな支障になりやすく、うつ状態に陥る可能性もあります。

ストレス関連障害(適応障害・うつ病・双極性障害)

適応障害やうつ病、双極性障害などはストレスと関連が深い病気です。ストレス関連障害の症状はパニック障害の症状に重なることも少なくありません。心配な場合は、心療内科を受診し、主治医に相談することが大切です。

よくある質問

カウンセリングだけで治療できますか?

パニック障害の治療は薬物療法と並行して認知行動療法に取り組むことで効果的だと言われます。そのため、心療内科受診と並行してカウンセリングを受けられることが良いでしょう。

電車に乗ることや狭い空間などに行くことに恐怖心を覚え、仕事に行けないなど支障があって困っています。パニック障害ですか?

症状のせいで仕事や学校にいけない状況であれば、パニック障害の可能性がありますが、まずは心療内科の受診をすることをおすすめします。また、パニック発作に似た症状を示す体の病気もあるため、まずは内科、耳鼻科、脳神経外科など身体の症状について受診していただくことも必要になるでしょう。

まずはご相談ください

「不安が強くとてもしんどい」

「不安や恐怖心が強く日常生活に支障をきたしている」

「パニック障害の治療がしたい」

とお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

カウンセラーにお話ししていただく中でお話ししていただくことで、今の状況を整理できます。心療内科の通院を迷われている方も、カウンセラーに今の状態をお伝えしたうえで受診をおすすめする場合もございます。

当カウンセリングルームでは、「気軽に」カウンセリングを受けられることをコンセプトにした対面を重視したカウンセリングルームです。ご予約はweb予約フォームよりご予約頂けます。

当相談室での改善例

強迫症・パニック障害と診断された男性のケース

20代 男性

ご相談内容


・不安が強く仕事に支障が出てしまっている。現在はテレワークなどでしのいでいるが、症状を改善したい

治療経過

心療内科受診(強迫症とパニック障害と診断)しつつ、カウンセリングを利用。全20回。

ある時から電車に乗ることや、出勤することが「怖い」と感じるようになったことで、危機感を感じ、心療内科を受診、カウンセリングを勧められ、当相談室に来室。

認知行動療法をベースで取り組まれ、不安階層表を作り、実際の不安場面に直面するようになる。セッションの中で、気づかれたことは、症状が発症した時期は仕事が激務でストレスが多かったこと、もともと完璧主義で「思い通りにならないと気がすまない」性格であることが自己理解できていた。少しずつ不安も少なくなり、ご本人なりのリラクゼーション法を見つけていき、改善につながっていった。

治療方法

認知行動療法

治療結果

1~5回は具体的にパニックが生じる場面について具体的にしていった。

6~15回では、パニックが生じる場面を10場面とりあげていただき、不安階層表を作成。

一番不安が小さい場面から実際に不安場面に出向くようにした。

最初は不安が強かったが、徐々に慣れ、一番強く感じる不安場面でも「行けるようになった」とのこと。16~20回はリラクゼーション法を身に着ける面接。不安も少なくなり、本人の希望もあり、カウンセリングを卒業。

パニック障害の治療のためのカウンセリングを受けたい方は、HeartLife(渋谷・新宿)こころの悩み相談所へお気軽にご相談ください。

引用参考文献

稲田泰之 「パニック症と過呼吸-発作の恐怖・不安への対処法-」

厚生労働省 「こころの病気について知る 不安障害

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