薬に頼らずカウンセリングだけでうつ病の治療はできるの?

うつ病と診断されて治療する上で、「薬だけは飲みたくない!」と考え、「カウンセリングだけで治療したい」と思われるクライアントはかなりの数いらっしゃいます。

とはいえ、薬に頼らずカウンセリングだけでうつ病の治療ができるのかどうか。今日は詳しく解説していこうと思います。

うつ病の治療方法

うつ病の治療方法について解説しますが、うつ病の治療方法は、「服薬」「カウンセリング」「休養」の三本柱となります。この3つ、どれも欠けても治療は成り立ちません。

うつ病の原因は、様々な要因が複合的に重なり生じるのですが、大きくは「環境要因」と「性格要因」と言われます。つまり、うつ病になるのは、その人の性格的な問題、その人の問題があるということが大きいのですね。

うつ病の症状は、「気持ちの落ち込み」や「やる気の低下」など様々な症状が現れます。

服薬は、症状を抑えるために非常に効果的ですが、症状を抑えるだけに過ぎません。

服薬だけで治療していたとしても、根本的な自分自身の心の問題と向き合い、解決しない限り、症状は解消しないと考えて頂いた方がいいと思います。

また、休養も非常に疎かにしがちですが、重要となります。

うつ病の原因のひとつは、「環境」とお伝えしましたが、仕事が激務で終電帰りが当たり前のような環境であれば精神的に負担がかかるのは想像に難くないと思います。

そもそも、うつ病と診断されているということは、心身ともに疲れているのです。

精神的にももちろんですが、身体的にも疲れているのです。

ですから、いくら服薬とカウンセリングをしたところで、休養しない限り回復はしません。40kmのマラソンを走った後に、更に30km泳ぐとなると、どうでしょう。

よほどの体力のある人は別でしょうが、一般的に40kmも走った後はヘトヘトですよね。うつ病と診断さされているということは、このようなヘトヘトな状態なのです。

まとめると、服薬は、うつ病の症状を抑えるために必要なものであり、休養は、うつ病と診断されているヘトヘトな状況をまず回復させるために必要であり、

カウンセリングは、うつ病になった根本的な原因を見つめ、どう自分と付き合っていくか、考えるために必要です。なので、このどれが欠けてもうつ病の治療はうまくいきません。

カウンセリングとは?

カウンセリングとは、カウンセラーとの対話を通して、自分自身と向き合き、やがて「気づき」を得ることによって結果的に自分自身の悩んでいる問題解決の糸口が見えてきて悩みが解消に向かうというプロセスをたどるものです。カウンセリングは、カウンセラーからアドバイスをもらうことではなく、カウンセラーとの対話が非常に重要になります。

対話を通して自分自身を見つめることができるからです。

うつ病になりやすい人の性格というものがありますが、例えば「几帳面」「頑固」「こだわりが強い」「真面目」「完璧主義」などあります。

うつ病になるのは、その人自身の性格が影響しています。

ここでいう「性格」というのはその人自身の考え方や捉え方ということですね。

例えば、仕事で、上司から「この資料、間違ってたから修正してほしい」と言われたときに、

ある人は「めんどくさいなぁ」と思う人もいるでしょうし、またある人は、「ミスをしてしまったということは、自分が仕事できないからだ、自分はダメな人間だ」と思う人もいるでしょうし、またまたある人は「この上司ムカつく」と思う人もいるかもしれません。

考え方は人それぞれでいいのですが、その考え方のせいで時に自分のことを苦しめることがあったりするのですね。

先程の例でいえば、「自分を責めてしまう」考え方の人の場合であれば、それが強すぎると自分を苦しめがちです。

うつ病になりやすい人は「自責」と言いますが、自分を責めてしまう考え方が強かったりします。

そして、うつ病と診断されている方の多くが、自分のそのような考え方のクセに気づいてなかったりします。

気づいていなければ、ただただ苦しいだけです。

カウンセリングでは、まずは自分の考え方の傾向、つまりクセに気づいて、そのクセとどう付き合っていくか考えていくことが必要です。人によっては、その考え方を変えることができるかもしれません。

先程の例でいえば、上司から指摘されたときに、いつも自分を責めがちな思考になっていたけれど

「でも上司は自分のことを否定したわけではない、あくまでミスを指摘しただけだ」と思えるようになる人もいますし、人によっては、自分の思考について変えなくても気づくだけで少し気持ちが楽になる場合もあります。

「あぁ、自分はいつも自分を責める考え方をしてしまうんだ」と自分を客観的に捉えることができれば、少し楽になる場合もあります。

このようにカウンセリングでは自分の思考を具体的に見ていき、自分の思考に気づき、それとどう付き合っていくか、考えていくことが目的だったりします。

薬に頼りたくない理由

実際、うつ病と診断されて、薬は飲みたくないからカウンセリングと休養だけでなんとか治療したいと仰る方はけっこうな数いらっしゃいます。

なぜ、薬に頼りたくないのか?ということですが、多くの場合は「精神科の薬」のイメージの悪さのせいではないでしょうか。

人によっては「精神科の薬なんか飲んだら、薬漬けにされて人生終わる」みたいなそういう考えをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

薬に頼りたくないのは、おそらくうつ病などの精神疾患への偏見からきているのではないかなと思います。

しかし、少し考えてみてください。例えば、のどが痛かったらどうしますか?

1週間も2週間も長引いたとしたら、耳鼻科や内科に行きますよね。

痛み止めの薬を出されたらどうしますか?飲みたくないと言い、飲まないのでしょうか。そんなことはないですよね。

ほとんどの方は、痛みを取りたいから服薬すると思うんです。

うつ病の服薬もそれと同じで、うつ病の症状を取りたいから服薬するわけです。

確かに、精神疾患の薬は飲んですぐに効くわけではなく2週間から1ヶ月ほどかかると言われますから、不安になる気持ちもわかりますし、先程の偏見もあればなおさらです。

ただ、うつ病の服薬も先程お伝えした、のどの痛みや腰の痛みなどの服薬と同じだと思っていただいた方が良いのかなと思います。

薬を飲むことで症状は緩和されるので、そっちの方が楽だと思いますので、もしうつ病と診断されて服薬に抵抗がある方は、そのように考えて頂けると良いのではないかと思います。

うつ病の治療はカウンセリングがメイン

うつ病の治療は、カウンセリングがかなり大きい役割を担ってきます。

服薬は症状を緩和するため、休養は、ヘトヘトな状態を回復するために必要ですが、それだけだと、またどこかのタイミングでうつ病を発症する可能性があります。

理由としては、うつ病の原因が自分自身、つまり自分の考え方や捉え方に問題があるからです。

だからこそカウンセリングで自分と向き合い、自分の考え方や捉え方とどう付き合っていくのか、考えることが再発防止につながるのです。

うつ病の再発率は60%を超えると言われます。

そして、一度再発すると更に再発する確率が70%、80%と再発すればするほど再発リスクが高まるとも言われます。

そのため、うつ病の治療は、実は再発予防がとても大事なんですね。

再発予防として、カウンセリングがとても有効です。

いくら服薬で症状を改善し、休養で心身の様態を回復したところで、自分の考え方が変わらなければ、どの環境に行ったところでまた同じように再発することがあるからです。

再発予防は、「自分とどう付き合っていくか」ということに尽きます。

日常生活の中で、自分にストレスを感じてないか、感じていたらどう解消するか、そのようなことを日々自分で取り組む必要があるんですね。

うつ病になりにくい人は、この辺が得意です。

つまりストレスにすぐ気づき、すぐにストレス発散をしていきます。

逆にうつ病になりやすい人は、自分のストレスに気づきにくく、気づいてもストレスをうまく発散できない人が圧倒的に多いです。このように、自分自身とどう付き合っていくのか、それがうつ病の治療の一番重要な部分だと言っても過言ではありません。

この記事の監修者

丸田 英世

Heart Life代表・室長

<資格>

公認心理師[国家資格](No.7710) 臨床心理士(No.31071)

<所属学会>

日本臨床心理士会

<略歴>

横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。

<公式SNS>

YouTubeアカウント:「心理カウンセラー【臨床心理士】がうつ病について語るCh」
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