名前は聞いたことがあるけれど意外と詳しく知らない「アダルトチルドレン」ですが、実はさまざまな原因からアダルトチルドレンになる可能性があり、さまざまな症状がみられます。
また、いくつかの治療法が存在しますが、まずはアダルトチルドレンの原因と症状について知る必要があり、症状に合わせた適切な治療法を選ぶことが大切なのです。
そこで本記事では、アダルトチルドレンの概要と特徴、治療法について詳しく解説していきます。アダルトチルドレンの治療を検討している方はぜひ最後まで読んでみてください。
アダルトチルドレンとは?
アダルトチルドレンとは、子どもの頃に機能不全家族に育てられ肉体的・精神的な負担を受けた人の中でも、大人になってからもその影響によって心理的に問題を抱えている人のことを指します。
機能不全家族とは、さまざまなストレスが日常的に存在している家族のことを指し、具体的には精神的・肉体的虐待や、ネグレクト(育児放棄)、子どもへの過干渉、子どもへの過度な期待などが挙げられます。
このような機能不全家族に育てられたアダルトチルドレンの心理的な問題にはさまざまな種類がありますが、主な問題として挙げられるのがアルコール依存症・薬物依存症・うつ病・不安障害です。
このように、現代での生きづらさを感じて多くの問題を抱えてしまうアダルトチルドレンですが、実はアダルトチルドレンという名前は医学的な診断名ではなく、もともとはアルコール依存症の親に育てられた人のことを指す言葉でした。
そこから意味が広がっていき、現在では機能不全家族に育てられ、その影響が大人になっても残っている人のことを指すようになったのです。
アダルトチルドレンに多くみられる特徴
アダルトチルドレンに多くみられる特徴は下記の3つです。
・人間関係が極端になりやすい
・精神疾患になりやすい
・自己肯定感や自尊心が低い
それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
1.人間関係が極端になりやすい
家族に愛情を持って育てられてこなかったアダルトチルドレンは、大人になってからの人間関係が極端になることが多いです。
例えば、人間関係の構築を避ける傾向にあるアダルトチルドレンは、引きこもりになったり親密な関わりを避けるようになりますし、一方で人からの愛情を感じたいと強く思っているアダルトチルドレンは人間関係で依存しやすく、自分も相手に尽くす傾向にあります。このように、アダルトチルドレンは人間関係が極端になりやすいのです。
2.精神疾患になりやすい
アダルトチルドレンは日々の生活を生きづらいを感じることが多く、多くのストレスを知らず知らずのうちに感じていることが多いため、精神疾患になりやすいのです。
先ほどもお伝えした通り、アダルトチルドレンがなりやすいアルコール依存症・薬物依存症・うつ病・不安障害などの精神疾患だけではなく、下記のような精神疾患になることも多いため注意が必要になります。
・PTSD(心的外傷後ストレス障害)
・気分障害
・双極性障害
・境界性パーソナリティ障害
・自己愛性パーソナリティ障害
・解離性障害
・適応障害
このように、アダルトチルドレンはさまざまな精神疾患になる可能性が高いのです。
3.自己肯定感や自尊心が低い
アダルトチルドレンは自己肯定感や自尊心が低いことも特徴のひとつとして挙げられます。
自己肯定感や自尊心が低いと生活のさまざまな部分においてマイナスに働いてしまいますが、中でも人間関係や日々の生活に大きな悪影響を与えてしまうのです。
例えば、常にネガティブな発言ばかりしていると人間関係の構築が難しくなってしまい孤独になってしまうことや、ネガティブ思考から将来への不安が大きくなってしまい自殺衝動に駆られてしまうこともあります。
このように、自己肯定感や自尊心が極端に低いアダルトチルドレンはさまざまな問題を抱えてしまい、生きづらさの大きな原因にもなるのです。
アダルトチルトレンドの治療法
アダルトチルドレンの治療法は下記の通りです。
・精神疾患への投薬治療
・グループミーティングへの参加
・カウンセリングを受ける
それぞれの治療法について詳しく解説していきます。
1.精神疾患への投薬治療
アダルトチルドレンが患っている精神疾患に対して投薬治療を行い、精神疾患の症状を改善していく治療法です。投薬治療では精神疾患の改善をすることができますが、その一方で根本的な生きづらさの改善には繋がりません。
2.グループミーティングへの参加
数多くのアダルトチルドレンが参加するグループミーティングへの参加し、中長期的にアダルトチルドレンと関わり合うことで精神的な辛さを軽減する治療法です。
自分の経験を話したり、ほかのアダルトチルドレンの話を聞く機会はなかなかありませんので、グループミーティングに参加することで気持ちが楽になったというケースは多いのです。
3.カウンセリングを受ける
カウンセリングは、アダルトチルドレンに対して豊富な知識を持っているカウンセラーと話すことで、現状の生きづらさの改善や根本的な精神的苦痛を改善していく治療法です。
アダルトチルドレンに対する理解度はまだまだ低い現状の中で、人間関係や精神的な状況をひとりで抱え込まないで信頼できるカウンセラーに定期的に話すことのできる環境があるだけでも生きづらさを軽減することができます。
自分の子どもをアダルトチルドレンにしないために
ここまでお伝えした通り、アダルトチルドレンは何気ない家庭環境でも起こる可能性がありますが、大人になるまで長期にわたって悪影響を及ぼすため、自分の子どもにはアダルトチルドレンになって欲しくないというのが本音ですよね。
そこで参考にしたいのが、下記のアダルトチルドレンについての著書を発表しているジャネット・G・ウォイティッツ氏が子どもをアダルトチルドレンにしないためにするべきことです。
1. 親自身が人間として成長するよう努力する
2. 子どもの話に耳を傾ける
3. 子どもに嘘をつかない
4. アルコール依存症について教える
5. アラティーン(※)への参加を薦める
6. 否認をやめる
7. アルコール依存症への惨害を隠さない
8. 子どもに愛情を示すのをためらわない
9. 子どもに明確な限界を教える
10. 子どもに自分の行動の責任をとらせる
(出典:ジャネット・G・ウォイティッツ『アダルト・チルドレン アルコール問題家族で育った子供たち』)
このように、アダルトチルドレンになるきっかけを作ってしまう行動はさまざまですので、その可能性を少しでも無くすために上記のことに気をつけて子育てすることが必要です。
まとめ
本記事では、アダルトチルドレンの概要と特徴、治療法について詳しく解説していきました。
アダルトチルドレンは子どもの頃の経験が大人になっても悪影響を及ぼす症状ですが、人間関係や日常生活に悪影響を与えるだけではなく、精神疾患になるケースも多いため、放置するのではなくしっかりと治療することが大切です。
しかし、病院ではアダルトチルドレンの根本的な改善をすることができず、アダルトチルドレンに付随して現れる精神疾患などの症状を改善することしかできないため、根本的な改善をするのであればグループミーティングやカウンセリングを活用する必要があります。
ぜひ本記事を参考にしてアダルトチルドレンへの理解を深めて適切な治療法を見つけてみてください。
この記事の監修者
横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。
<公式SNS>YouTubeアカウント:「心理カウンセラー【臨床心理士】がうつ病について語るCh」
公式Twitter
公式Instagram