今日はうつ病に運動は果たして効果的なのかどうかについて解説します。
【うつ病に運動は効果的?】
結論から言うと
うつ病に運動は効果的です。
なぜかということをこれから説明していきたいんですけれど、
厚生労働省による2017年国民健康・栄養調査によれば
20歳以上の成人は運動習慣のある人は
男性で35%、女性は28%でした。
年代別にみると、男女ともに健康意識が高まる60代以降は運動する人が増えるのですが、
20~50代は低くて
もっとも運動しない世代は男性では30代で女性では20代でした。
つまり若い世代ほど、運動不足だということですね。
運動不足は身体を健康に保つためには良くないと、それは誰でもご存じなことだとは思いますが
最近の研究では
精神疾患の発症リスクにもなり得るし、
精神疾患に仮になったとして、経過を悪化させる原因になることがわかってきました。
コロナ禍になってから
最近、心療内科やカウンセリングの相談件数が多くなったなぁと思うし
うつ病や適応障害と診断される方が多くなっているなぁと
個人的な感覚ではありますが思うんですけれど、
ひとつの要因の背景には、コロナ禍になって外出自粛とか
行動制限とかとにかく家でじっとするみたいなことがおおくなったことが
背景にあるのかなと思ったりします。
【運動はハードルが高い】
運動はとても良いんだよ、と言われたところで
視聴者の皆様はこう思うのではないのでしょうか。
「いや、いくら運動はいいと言ってもハードルが高い」と。
確かに
運動習慣がない人にとっては運動するのは
非常にハードルが高いと思います。
トレーニングジムに入会して、さあ定期的に運動するぞ、と思っても
1年後ジム通いを続けている人は実に約4%しかいないというデータもあります。
つまりほとんどの人が運動が続かないんですよね。
でも
運動が続かないことは当たり前の事なんですね。
少し生物学的な話になるんですけれど
さかのぼる事、狩猟採集時代。
狩りをしていた人間の時代にさかのぼります。
現在のように、
スーパーマーケットに行けば、食料が調達できるみたいな
食糧飽和の時代と今は言われていますが
過去の人類は飢餓に苦しんでいたんですね。
つまり明日の食料もあるかわからない、
そんな状況で暮らしていました。
その日ぐらしで狩りをして食料を調達して食べる、
そんな繰り返しだったんじゃないかなと思います。
だから明日、食料が無かったら死ぬかもしれない、そんな状況だったから
どうしたかというと
できるだけ体力を温存しようと考えるようになったんですよね。
つまり明日食料がなかったとしても
ある程度は生きていけるように進化していったわけです。
だから人間のDNA的には
「運動したり、動いたりすると、エネルギーが消費される、
エネルギーが消費されるということは飢餓になる可能性がある、
だからできるだけ体力を温存しよう」
そんな感覚がしみついているんですよね。
あとは、過去の人類は危険な動物とも隣り合わせでしたし
いつライオンやトラなどに食べられちゃうかわからない、そんな環境に居たわけです。
ですから体力を温存すると同時に、
すぐに逃げられるようにする体力をとっておく必要もあったわけです。
だから無駄に運動なんてしたら、エネルギーが消えてしまうから
人間にとっては「危険」なわけですよね。
現代は、食料がある時代ですし、
めったに危険なことなんてありませんから
体力を温存させることなんて
もう必要はないのですが、
過去の人類の感覚がDNAレベルで残っているんですよね。
ある人類学者は、
人間の脳は1万年前から殆ど変わっていない、と言われる方もいたりします。
ということで運動することは
人間にとっては脅威だし危険だと思う、
だから
人間は体力を温存しようとする感覚に傾く、
結果的に
「今日はジムに行こうかな、いやでも今日仕事で疲れたし、やめておくか」
っていう感覚になるのです。
これはだらしないからではなくて、むしろ人間としては当然の感覚なんです。
むしろ、定期的に運動できる方がおかしいということなんですね。笑
なのでひとつ運動のハードルが高いと感じるのは
当然の感覚であるということをまず理解していただけるといいかなと思います。
【最初はできそうな運動から】
ではそのうえで
運動するには何をすればいいのでしょうか。
結論から言うと、
少しだけ息が上がる程度の速度で5分とか10分くらい
ウォーキングから続けてみるのもいいでしょう。
まずは週1日をめどにやってみましょう。
最初から強い負荷をかけた運動はやめましょう。
いきなり負荷をかけると身体もびっくりしてしまいますし、
なにより続かないです。
運動習慣がないのにいきなり強い運動をすれば
疲労がハンパありません。
それによって、「運動はとても疲れるもの」と脳が学習してしまうので
億劫になりがちになります。
週1日ウォーキングからはじめて、
徐々に時間を増やしていきましょう。
5分から10分、10分から20分に
あと頻度も週1日から2日に、3日と言う形で良いので
無理のない範囲でやってみましょう。
ウォーキングではなくてランニングでもいいと思います。
その場合も徐々に増やしていくことが大事です。
無理せず自分のペースでやっていくことが大事です。
【運動習慣を定着させるには】
運動はできるだけ自分の生活の中にとけこますことが大事です。
要するに歯を磨くように運動ができれば理想的なんですね。
皆さんはおそらく歯を磨かないでいる人はいないと思うんですよね。
習慣になっていると思います。
そのように習慣にするコツもあるのでご紹介出来たらと思います。
・決まった時間に運動する
まずはいつも決まった時間に運動することが大事です。
「この時間は運動する時間だ」と言う風にしておくことで
体内時計も覚えてくれるようになります。
忙しい現代人ですから難しいかもしれません。
理想は夕方くらいが良いと言われます。
朝は脱水状態のことが多いので特に激しい運動は危険ですし、
夜遅いとクールダウンに時間がかかると言われます。
・記録をつける
記録をつけてみるのも良いでしょう。
今日はどれくらいできた、とかそれを見返すとモチベーションにもなると思います。
・仲間と共に取り組む
仲間と一緒に取り組むことも途中で続けられないことを防ぐには効果的です。
・フィットネスクラブに通う
つまりジム通いですね。月会費を払うことで
「行かなきゃ」という気持ちにもなりやすいとうことと、
パーソナルトレーニングなど利用するとより続けやすくなるかもしれません。
【運動すると睡眠の質が良くなる】
運動すると睡眠の質が良くなるという海外の研究があります。
睡眠の質が良くないと寝たのに疲れが取れないですが、
質が良ければ、疲れもしっかりとれやすいわけですね。
また、運動すれば、睡眠時間も長くなると言われています。
なかなか眠れないなどそのようなお悩みのある方は
運動はとてもうってつけなんですよね。
【運動することで脳の新しい神経細胞が増える】
運動することで、
脳の新しい神経細胞が増えるという研究もあります。
でこれが増えるとどうなるかというと
記憶で重要な脳の部位、
海馬の脳領域の体積を増加させることや認知機能を改善させるといいます。
つまり、脳が活性化するわけですよね。
記憶も良くなり、脳の回転が良くなるということです。
運動って脳にも良い影響があるんですね。
いかがでしたか。
それでは次回のブログでお会いしましょう。
この記事の監修者
横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。
<公式SNS>YouTubeアカウント:「心理カウンセラー【臨床心理士】がうつ病について語るCh」
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