再発率が高いことで知られるうつ病はさまざまなアプローチによって改善を目指しますが、その中でも効果的な治療方法として挙げられるのが「カウンセリング」です。
うつ病は医療機関だけで治療が行われることが一般的ですが、それだけでは再発率が高いことから医学的アプローチ以外にもうつ病に対するアプローチをするべきなのです。
本記事ではうつ病のカウンセリング療法の必要性や受けるタイミング、正しいカウンセラー選び、費用などについて詳しく解説します。
医療機関の医療だけではうつ病の症状が思うように改善されなかったという方やうつ病が再発してしまった方、はじめてうつ病になってしまいどのように改善すればいいのか分からないという方は、ぜひ最後まで記事を読んでみてください。
うつ病の治療方法
うつ病の治療方法として主に使用されるのは以下の4つの方法です。
- 休養
- 環境調整
- 薬物治療
- 精神療法
それぞれの治療方法について、以下で詳しく解説します。
うつ病の治療方法①:休養
うつ病を治療するためには、心身ともに十分な休養を取ることが第一歩となります。
中でもうつ病の症状が強く、行動することが億劫になっている場合や行動するとすぐに疲れてしまうなどの症状が見られる場合は十分な休養が必要となります。
とはいえ、休養中にまったく行動せずに寝たきりの状態を続けていると体力面が衰えてしまうことが多く、休養後に復帰することが困難になってしまいます。
そのため休養中は寝たきりの状態を続けるのではなく、無理のない範囲で散歩やウォーキングなどの軽い運動を取り入れるとともに日光を浴びることを心がける必要があります。
うつ病の治療方法②:環境調整
うつ病の患者になりやすい人の特徴として「真面目」や「自分に厳しい」などが挙げられるため、うつ病になってしまったら人間関係においてストレスを感じないように環境を調整することも大切です。
職場や学校、家庭など、人間関係のある場所ではストレスを感じやすいため、職場であれば部署異動や時短勤務などができるかどうかを職場に確認する、学校であれば担任の先生に相談する、家庭であれば家族に家事を手伝ってもらう相談をするなど、うつ病になってしまったときの環境から少しで変化させ、ストレスを軽減させることが必要になります。
環境調整をすることで周りの人に迷惑がかかってしまうと考える方も多いですが、うつ病の症状が悪化してしまうとさらに状況が悪くなってしまうため、症状が軽い段階から積極的に環境調整をすることが重要です。
うつ病の治療方法③:薬物治療
うつ病の治療において薬物治療は必要不可欠です。
現在日本で行われているうつ病に対する薬物治療は「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」や「SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)」などの『抗うつ薬』となっています。
これらの抗うつ薬の効果は個人差があり、薬物治療を行ってからすぐに効果が見られる人もいれば、時間が経ってから効果が見られる人もいます。
また、抗うつ薬以外にもうつの症状に合わせて「抗不安薬」や「睡眠導入薬」、「気分安定薬」、「非定型抗精神病薬」などの薬が処方されることもあります。
薬物治療は副作用が起きる可能性もある治療方法ですので、必ず医師の指示に従って服薬する量やタイミングを守る必要があります。
うつ病の治療方法④:精神療法
うつ病の治療において、休養・環境調整・薬物治療と併せて行うことで効果的だと言われているのが精神療法です。
うつ病の精神療法には「認知行動療法」と「対人関係療法」という2つの治療方法があります。
「認知行動治療法」では、ネガティブな感情やマイナス思考を無くすために、物事の捉え方や考え方を客観的に見てもらい改善する方法で、「対人関係治療法」はうつの原因が人間関係である場合に対人関係における問題点を発見し、改善することでネガティブな印象を持っていた対人関係を受け入れやすくする方法です。
これらの精神療法はうつ病患者ひとりで行うのではなく、主治医やカウンセラーのサポートを受けながら受ける必要があり、うつ病の再発防止にも効果的な療法です。
うつ病のカウンセリング療法とは
うつ病においてカウンセリング療法を用いることが多いです。ここでは、そもそもカウンセリングがどのように行われるのかについて詳しく解説します。
1.カウンセリングとは
厚生労働省がメンタルヘルスを目的として作った「こころの耳」では、以下の内容をカウンセリングの共通事項であると定めています。
”心理学的な専門的援助過程である。その過程は大部分が言語を主な手段として、カウンセリングの専門家であるカウンセラーと、何らかの問題を解決すべく援助を求めているクライエントがダイナミックに相互作用し、カウンセラーは様々な援助行動を通して、自分の行動に責任を持つクライエントが自己理解を深め、「よい」意思決定という形で行動できるようになることを援助する。
その究極的目標は個人が、一時的に遭遇する困難を克服して、クライエントがその人なりの特徴をフルに生かして成長し、社会のなかでその人なりに最高に機能できる自発的で独立した人として自分の人生を歩むようになることである。(出典:厚生労働省「Q5:カウンセリング効果の実際は?」)
2.うつ病のカウンセリングの内容
うつ病においてのカウンセリングは精神療法における方法のひとつです。
うつ病のカウンセリングは主治医もしくは臨床心理士の資格を持ったカウンセラーがカウンセリングを担当することが一般的です。カウンセリングではうつ病の患者一人ひとりが抱えている悩みやうつ病になった原因などについて改善方法を二人三脚で探し出し解決することで、うつ症状の緩和や再発防止を目指します。
カウンセリングはうつ病に対しての精神的なアプローチとなるため症状の改善を目的としてることは少なく、あくまで”改善”が目的です。うつ病の症状の改善は休養や薬物療法で行われます。
主治医と臨床心理士によるカウンセリングの違い
主治医によるカウンセリングと臨床心理士によるカウンセリングの最大の違いはカウンセリングの時間です。
主治医によるカウンセリングは保険診療になるケースが多いため、どうしても患者一人に割ける時間が短くなってしまうため、カウンセリングというよりも診察に近い形で短時間で行われることが一般的です。
一方で臨床心理士によるカウンセリングは1回50分〜60分程度の時間をかけて行われることが多く、うつ病患者一人ひとりに合わせてじっくりとカウンセリングしてもらうことができます。
また、主治医のカウンセリングは医学的な視点でのアプローチが行われ、臨床心理士によるカウンセリングは臨床心理学に基づいたアプローチがされるという違いもあります。
そのため、医学的なアプローチでは改善できなかったうつ病であっても、臨床心理学に基づいたアプローチであれば改善できたというケースもあります。
うつ病にカウンセリングが必要な理由
うつ病は再発率が非常に高い心の病気と言われており、再発率は60%以上と言われています(参考:医療法人財団 東京足立病院千寿サテライト メンタルクリニック三叉路)。
医療機関で行われるうつ病に対するアプローチ方法は休養や薬物治療が主な方法ですが、これらの方法は表面的なうつの症状を治す治療方法となっており、根本的なうつを改善することはできません。
根本的なうつ病を改善するためには「なぜうつ病の症状が発症してしまったのか」という原因を明確にすることや、「どのような考え方が必要なのか」といううつ病になりやすい思考を根本的に改善することが大切となり、このようなうつ病になってしまった根本的な原因やうつ病になりにくくするための思考を考えることができるアプローチがカウンセリングなのです。
このように、うつ病に対して休養や薬物治療をするだけでは再発率が60%以上になるということは、アプローチとしては不十分であると考えることができ、再発率を減らすためにはカウンセリングを併せて行うことが必要なのです。
うつ病のカウンセリングを受けるタイミング
うつ病に対するアプローチ方法としてカウンセリングを受けることは重要ですが、うつ病患者本人がカウンセリングを必要としていない場合にカウンセリングを受けても十分な効果を得ることはできません。
受けたくないカウンセリングを無理やり受けたとしても、カウンセラーを信頼できませんし、何より自分のことを話したいという気持ちにならないため、患者本人がカウンセリングを受ける必要性を感じていないのであればカウンセリングは受けないほうがいいでしょう。
そのため、カウンセリングを受けるべきタイミングは本人がカウンセリングに前向きということが最低条件になります。
それに加えて、復職を考えているときや行動習慣を見直したいときにもカウンセリングを受けることがおすすめです。
うつ病のカウンセラーの正しい選び方
うつ病のカウンセリングは医療機関以外で行われることが一般的であるため、自分でカウンセラーを探す必要があります。
具体的には以下のようなポイントを重視してカウンセラーを探しましょう。
- 臨床心理士の資格を持っているか
- カウンセリング方法は適切か
- 無理のない予算か
それぞれの選び方について、以下で詳しく解説します。
1.臨床心理士の資格を持っているか
うつ病に対してのカウンセリングは臨床心理士の資格を保有しているカウンセラーが担当することが基本ですが、中には臨床心理士の資格を持っていないカウンセラーも存在するため、臨床心理士の資格を持っているカウンセラーかどうかを必ず確認しましょう。
2.カウンセリング方法は適切か
うつ病のカウンセリングはさまざまな方法で行われるため、自分に合った方法でカウンセリングを受けられるかどうかを確認することも大切です。
具体的には対面カウンセリング・電話カウンセリング・ビデオ通話カウンセリング・チャットカウンセリング・メールカウンセリングなどの種類がありますが、うつ病のカウンセリングの場合は対面カウンセリングやビデオ通話カウンセリングにすることで、より高い効果が期待できます。
とはいえ最も重視すべきことはうつ病患者本人の気持ちですので、どのカウンセリング方法が心身的な負担が少ないかを話し合って決めましょう。
3.無理のない予算か
カウンセリングは保険適用外になることが一般的なため、無理のない予算でカウンセリングを受けられるかどうかを確認しましょう。
費用的に無理をしてカウンセリングを受けてしまうと、別のストレスがかかってしまう可能性もあり、金銭的な苦痛が原因でうつ病が悪化してしまう可能性もあります。
また、カウンセリング費用が安いだけでカウンセラーを選んでしまうと効果的なカウンセリングが行われない可能性もあるので注意しましょう。
うつ病のカウンセリングの費用
うつ病のカウンセリングを受けるときの比喩は1回あたり(50分〜60分程度)1万円ほどが費用相場です。
うつ病のカウンセリングは保険適用されないことが一般的ですが、「認知行動療法・精神分析療法でのカウンセリング」や「通院・在宅精神療法でのカウンセリング」などの特定の条件が主治医から認められ場合においては保険適用内でカウンセリングが行われることもあります。
ただし、保険が適用されるためにはさまざまな条件があるため、保険適用内でカウンセリングを受けることができるかどうかについては、必ず担当の主治医に確認してみてください。
まとめ
本記事ではうつ病のカウンセリング療法の必要性や受けるタイミング、正しいカウンセラー選び、費用などについて詳しく解説しました。
うつ病の症状を改善するためには休養や医療機関による薬物療法が必要となりますが、これらはうつ病を根本的に改善する治療方法ではないため、根本的に改善するためにカウンセリングを受けることが必要です。
うつ病を表面的に改善しても再発してしまうと再び辛い思いをしてしまうため、カウンセリングのなかでうつ病になってしまった原因となる考え方や人間関係の捉え方などを明確にして再発しにくい形でうつ病を改善していきましょう。
この記事の監修者
横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。
<公式SNS>YouTubeアカウント:「心理カウンセラー【臨床心理士】がうつ病について語るCh」
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