うつ症状の患者はカウンセリングを受けるべき?必要なケースと効果を解説

うつ症状は誰にでもなりうる可能性のある症状ですが、適切な処置をしなければ改善することはむずかしく、また再発の危険性もあります。

そんな中注目されているのが、うつ症状の患者に対するカウンセリング治療なのです。

うつ症状の患者がカウンセリングを受けることで、薬物療法では得られないような効果を得ることができることや、再発の防止に繋げることができます。

とはいえ、うつの治療法のひとつであるカウンセリングがどのようなものなのか、さらにはどのような場合にカウンセリングが必要になるのかなど、カウンセリングについて知らないという方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、うつ症状の患者に対するカウンセリングの概要や診療治療との違い、さらにはカウンセリングが必要になるケースについて詳しく解説していきます。

うつ症状の改善にカウンセリングを検討している方はぜひ最後まで読んでみてください。

うつの治療方法とは?

うつ症状の患者の治療方法は、薬物療法・休養・環境調整・カウンセリングの4つが主に選択されます。

どの治療法を選ぶのかは、主治医が身体の状態・既往歴・家族歴・生活歴・適応状態などから方針を決定することが多いです。そもそも、「うつ状態」と「うつ病」は異なる症状であることもありますし、うつ病の中でも誘因や背景は患者によって異なります。

そもそもカウンセリングとは?

うつの治療法としてもよく使用される「カウンセリング」ですが、実は使われ方によって定義は異なるため、明確な定義は存在しないのです。

とはいえ、厚生労働省がメンタルヘルスを目的として作った「こころの耳」では、カウンセリングについて下記ことが共通事項であると定めています。

”心理学的な専門的援助過程である。

その過程は大部分が言語を主な手段として、カウンセリングの専門家であるカウンセラーと、何らかの問題を解決すべく援助を求めているクライエントがダイナミックに相互作用し、カウンセラーは様々な援助行動を通して、自分の行動に責任を持つクライエントが自己理解を深め、「よい」意思決定という形で行動できるようになることを援助する。

その究極的目標は個人が、一時的に遭遇する困難を克服して、クライエントがその人なりの特徴をフルに生かして成長し、社会のなかでその人なりに最高に機能できる自発的で独立した人として自分の人生を歩むようになることである。(出典:厚生労働省「Q5:カウンセリング効果の実際は?」)

ちなみに、カウンセリングではうつ症状のある方のことを「患者」とは呼ばずにまた、カウンセリングを受けるうつ症状のある方は「患者」とは呼ばずに「クライエント(カウンセリングを受ける人)」と呼ぶことが一般的です。

うつのカウンセリングでは何をするの?

うつ症状のある患者に対するカウンセリングでは、患者一人ひとりが抱えている悩みや症状に合わせてカウンセラーと一緒に考えたり話し合うことで気持ちを楽にすることや、自分がしたいことや自分はどうするべきなのかなどについて考えることで自己理解を深めるといった効果が期待できます。

うつのカウンセリングは通常、臨床心理士の資格を持った専門のカウンセラーと1回1時間程度のカウンセリングを実施し、会話や自己理解などが主な内容になりますが、最終的な目標は”うつの症状改善”です。

カウンセリングと診療治療の違いは?

カウンセリングと診療治療の最大の違いは、うつ症状に対するアプローチの方法です。カウンセリングと診療治療の最終的な目的は「うつを治すこと」になりますが、先ほどもお伝えした通り、カウンセリングでは専門のカウンセラーと会話をしながらうつの治療を進めるのに対して、診療治療は薬物治療や精神療法というアプローチが主になります。

このようにカウンセリングと診療治療のアプローチは異なりますが、一人ひとりの気持ちを聞きながら治療していくことが大切なうつにおいて、診療治療だけでは患者と十分に寄り添うことが難しくなってしまうため、カウンセリングを併用して行うケースも多いのです。

うつ症状の患者にカウンセリングが必要ケース

うつ症状の患者にカウンセリングが必要なケースは下記の4つです。

・考えて話せる状態のとき

・うつの原因が社会的問題が関わっているとき

・経済的に受けられるとき

・患者がカウンセリングを必要だと判断したとき

それぞれの必要なケースについて詳しく解説していきます。

ケース①:考えて話せる状態のとき

カウンセリングはカウンセラーとうつ病患者が対話をすることで成立する治療法であるため、患者が考えて話せる状態であることが最低限必要ですが、うつ病を改善するために今までの生き方や働き方について掘り下げることは大切です。

とはいえ、うつ病患者が無理に深く考え込むことは治療に良くないため、基本的にはカウンセラーと主治医が相談してカウンセリングを進めていきます。

患者が話せない場合は、まず薬物治療や休養を通して症状を改善することが必要です。

ケース②:うつの原因が社会的問題が関わっているとき

うつに至った原因の中に、職場や人間関係、物事の考え方、行動パターンなどのさまざまな社会的問題が関わっている場合はカウンセリングを受ける必要があります。

というも、薬物療法や休養などでもうつ症状の緩和や改善をすることは可能ですが、うつに至った原因の根本的な解決になっていないため、再びうつ症状前の生活に戻った場合に再びうつ症状になる可能性が高いからです。

そのため、社会的問題が原因でうつになってしまった場合はカウンセリングを通して根本的な原因の解決をする必要があります。

うつ症状の原因となった根本的な要因を解決することができれば、うつが発症した環境に戻っても適応できる可能性が高まるのです。

ケース③:経済的に受けられるとき

医師以外のカウンセラーによるカウンセリングは保険が適用されませんので、経済的に余裕がなければ通常受けることが難しいです。カウンセリングは1回10,000円ほどかかり継続する必要があるため、経済的負担が増えてしまいます。

ケース④:患者がカウンセリングを必要だと判断したとき

カウンセリングは患者の自発的な意思があるうえで主体的に取り組むことで効果を得られる治療方法であるため、いくら医師がカウンセリングが必要だと判断しても患者自身の意思がない場合はカウンセリングを受けることはできません。

つまり、カウンセリングによる治療を受けるためには患者自身がカウンセリングを必要だと判断する必要があるのです。

まとめ

そこで本記事では、うつ症状の患者に対するカウンセリングの概要や診療治療との違い、さらにはカウンセリングが必要になるケースについて詳しく解説していきました。

うつ症状の患者に対してカウンセリングをすることで、薬物療法や休養では解決できない根本的な原因の改善に期待できます。

うつ症状は薬物療法や休養では一時的な解決しかできず、再びうつが発症した環境に戻ってしまうと再発してしまう可能性が高いのです。

しかし、カウンセリングを受けて根本的な原因を解決することで、同じ環境に戻ってもうつが再発する可能性が減り、社会復帰も容易になります。

ぜひ本記事を参考にして、うつ症状への治療法の違いやカウンセリングの方法、効果について理解してみてください。

この記事の監修者

丸田 英世

Heart Life代表・室長

<資格>

公認心理師[国家資格](No.7710) 臨床心理士(No.31071)

<所属学会>

日本臨床心理士会

<略歴>

横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。

<公式SNS>

YouTubeアカウント:「心理カウンセラー【臨床心理士】がうつ病について語るCh」
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公式Instagram

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