うつ病は軽度の場合でも治療に半年~1年程度かかるといわれます。
そのため、うつ病に罹患した場合、「うつ病は本当に治るのか?」不安に感じてしまう方も多いかもしれません。
そこで今回はうつ病の治療方法と再発予防について解説していきたいと思います。
うつ病の治療について
結論から言いますと、治療方法は主に3つで薬物療法、心理療法、休養の3本柱となります。
うつ病の治療は、軽度であれば半年以内、重症の場合は数年単位で治療が必要と言われています。
うつ病の初期は、「ちょっと怠いなぁ」や「疲れやすいなぁ」など人によってはあまり気にならない程度なので、初期症状は見過ごされてしまいがちです。
しかし、ずっと放置して悪化してしまうと、生活ができなくなるなど日常生活に支障をきたしてしまうため注意が必要です。
うつ病の回復までのプロセス
うつ病の発症から回復までのプロセスは大きく3つに分けられます。急性期、回復期、再発防止時期の3つです。
まず急性期は、状態としては、抑うつ状態がほとんど1日中、毎日2週間以上続くことや仕事や家庭に支障がでる、つまり生活できない状況がこの急性期です。
人によっては、布団から起き上がれない状態になる人もいます。
まずは休養と薬物療法を中心に取り組んでいくことが大事でしょう。
少しずつ調子が回復して来たら心理療法も取り入れて治療を進めていきます。急性期は、個人差はありますが、だいたい平均して3か月程度かかると言われます。
次に回復期ですが、少しずつ活動できるようになる時期がこの時期です。
ただ、ここで無理をするとぶり返す、これを再燃と言ったりしますが、再燃する可能性があるので無理しないことが第一優先となります。個人差はありますが、だいたい2ヶ月程度要すると言われます。
そして再発防止時期ですね、症状がなくなってきて回復する時期です。
ただうつ病の再発率は60%を超えると言われます。回復しても半年~1年程度は治療を継続する必要があります。
日常生活に戻って、場合によっては仕事に復帰してストレスがかかってしまい、再発の危険性もあります。
1ヶ月に1回でも良いので通院やカウンセリングを受けて様子を見て頂いた方が良いでしょう。
ちなみに服薬についてですが、抗うつ薬を使用します。
主な抗うつ薬は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と言われるものや、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と言われるもの、他にもノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ約(NaSSA)、セロトニン再取り込み・セロトニン受容体モジュレーター(S-RIM)、三環系・四環系抗うつ薬などもあります。
薬の副作用ですが、眠気やだるさなどがあります。副作用は、服用直後に表れやすいですが、効果を発揮するのは早くても2~3週間や1か月後になります。だから最初は服薬していてしんどいとは思いますが、薬の副作用はほとんどが一過性と言われますので本当にしんどいときは主治医に相談すると良いでしょう。
また、抗うつ薬を服用している間は、飲酒はタブーと言われます。
アルコールの作用で薬が効きすぎたり、逆に効きにくくなったりします。
また思考量が低下して衝動性が強くなることもあります。
服薬期間は薬の成分が常に血中にあるので、いつ飲酒したとしても悪い作用になるため飲酒は良くないと言われます。
うつ病の要因
うつ病になる要因は一体何でしょうか。主に社会的、心理的、生物学的の3つの要因があると考えられます。
社会的要因とは、例えば、職場で過重労働やパワハラやセクハラ、いじめなどの人間関係の問題があるとか、家庭では離婚や、嫁姑問題、障害のある家族の介護などの問題などです。
他にも災害や戦争、不況など社会状況がうつ病を引き起こすリスクもあると言われます。
「職場環境にストレスを感じる」
「家庭環境にストレスを感じる」
「経済状況に不安を感じる」
などこの3つすべてに当てはまるのであれば注意が必要でしょう。
心理的要因というのは、気質や性格の問題ですね。
こだわりが強い執着気質、生真面目で完璧主義、心配性で物事をなんども繰り返し考えてしまいがちな反芻思考などの傾向にある人はうつ病になりやすいと言われたりします。例えば、
「『どうしてあんなことしたんだろう』と後悔しやすい」
「心配したことを何度も思い出してしまいがち」
「この先どうなるのか不安になりやすい」
「少しでも間違えたりすると自分を責めがち」
など半分以上当てはまるのであればうつ病になりやすいリスクがあると考えられます。
生物学的要因というのは、遺伝や病気や障害による要因です。
これはどういうことかというと、家族に双極性障害やうつ病の人がいたり、自分自身がうつ病ではなく発達障害など別の精神疾患をすでに抱えている場合などはうつ病になるリスクがあると考えられます。
生物学的な要因で性ホルモンが影響する3つのうつ病があります。ひとつめはPMSです。
これは月経前症候群と言われますが、女性ホルモンの変動によって月経の2週間くらい前からイライラや落ち込み、強い眠気、不眠など身体の不調が現れるものです。
一般的には月経開始とともに消失すると言われます。その中で、特にイライラや落ち込みが強く表れるものをPMDDと言い、月経前不快気分障害と言われたりします。
2つめは出産前後のうつ病です。
出産後の女性の10~20%がうつ病を発症すると言われます。
出産によって、女性ホルモンの分泌量が低下するタイミングに育児のストレスが加わることが主な要因と言われたりします。人によっては出産前に抑うつ状態が始まっているケースもあったりします。
3つめは更年期のうつ病です。
女性の場合は50歳前後で閉経に伴なう女性ホルモンの低下が起こり、心身に様々な症状が生じやすいと言われますが、イライラや落ち込みなど精神的な症状も起こりやすいと言われます。
うつ病の再発予防
うつ病は再発予防が一番治療で大事と言われるほど、再発予防が重要です。再発予防は、結論から言いますと、生活リズムをしっかり作ることと、セルフケアをしっかり行えることの2つです。
①生活リズムをしっかり作る
うつ病になると、まず不眠や食欲不振などの症状が現れて次第に生活リズムが乱れます。
そのため、再発予防にはまずは生活リズムを整えることが大事です。
基本的には規則正しい食事と運動、睡眠をとることです。食事は1日3回、決まった事案に食事をとり、日中に適度な運動をして、夜はきちんと眠るようにすることです。
運動については、無理のない程度で良くて、例えば、1日15分だけ散歩しようとか、その程度で十分です。
無理してジムで筋トレとかしてもいいですけれど、そこまで無理しない方がいいと思います。
一番大事なことは続けられるかどうかで考えてみてください。あと、趣味を自分で作るということも大事です。
趣味のある人の方がうつ病になりにくいと言われることもありますから、自分が気分転換になりそうなことや楽しいと思えることをやってみることも大事です。
②セルフケアをしっかり行う
あとはうつ病の治療で心理療法(カウンセリング)を受けると思いますがそこで取り入れたことを実生活で実践することも大事です。
うつ病になりやすい人は、ストレスに気づいていない人や気づいていても無理してしまいがちな人が多いですがそれがうつ病の再発のトリガーになることもあります。
ですからまず、自分がストレスを感じているかどうかをしっかり感知する、アンテナを張っておくようにすることです。
ストレスを感じたら、休息をできるだけ取るように心がけましょう。
また不安や緊張感や焦りが生じたら、深呼吸する習慣をもつのも良いでしょう。
自律神経が整い、気持ちが落ち着きやすいです。
このように自分のセルフケアをしっかりやっていけるかどうかでうつ病の再発率も変わると思いますので是非実践してみてくださいね。
今回はうつ病の治療方法と再発予防について詳しく解説いたしました。
この記事の監修者
横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。
<公式SNS>YouTubeアカウント:「心理カウンセラー【臨床心理士】がうつ病について語るCh」
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