カウンセリングに行くとアドバイスがもらえる?臨床心理士が解説

はじめてカウンセリングを受けようと考えている方であれば、カウンセリングに行ってカウンセラーからアドバイスを貰って魔法のように劇的に変わるんじゃないか?と思われている方も一定数いらっしゃると思います。

一方で、カウンセリングを受けた後の感想で「カウンセリングってただ話を聞いてるだけで何も解決しなかった」と感じる方も多いのも事実です。確かに、ネットでカウンセリング、スペースで検索すると「カウンセリング(スペース)意味ない」というワードの検索量が圧倒的に多いのも事実です。

果たしてカウンセリングでは本当にアドバイスをしてくれないものなのか?今日は現役臨床心理士が詳しく解説します。

カウンセリングではアドバイスをしない

結論から言いますと、カウンセリングの中でカウンセラーがアドバイスはしません。

一般の方からすると、カウンセリングのイメージは様々あると思いますが、カウンセラーが「先生」で、相談者が「生徒」のような関係性をイメージしている方が多いと思います。

つまり「教えを乞う」ような感じですね。

カウンセラーからアドバイスを貰って解決する、ようなイメージが根強いと思います。

しかし、これはカウンセリングについての誤解です。

もちろん、まったくカウンセラーが全くアドバイスをしないかと言うと、そういうわけではありません。必要があればアドバイスをすることもあります。ただ基本的には、アドバイスはしないのです。

なぜアドバイスをしないのか?

ではなぜアドバイスをしないのか?という疑問にぶち当たると思います。

それにはまずカウンセリングとは何かということを解説しなければいけません。

カウンセリングとは?

カウンセリングとは、カウンセラーとの対話を重ねて次第に相談者が「気づき」を得ることによって、結果的に相談者の悩みの解決の糸口を見つけていくものであり、カウンセラーはそのお手伝いをしていくわけです。

カウンセリングの考え方として、相談者の悩みは、相談者の心の中にすでにあるんだということなんですね。

そもそも相談者が今悩んでいること、苦しんでいることその解決方法については、本人の中にあるということです。

だけれども、心に余裕がない状態だと見つかるものも見つからないわけです。

そんなときに第三者的存在であるカウンセラーと対話を重ねることによって見えるようにしていく、これはすなわち「気づき」のことなんですけれど、気づきを促していくことです。

カウンセラーの基本姿勢は、「傾聴」だといわれています。

傾聴ということは、相談者の話を「聞く」ということです。ひたすら聞くのです。

ここには「アドバイス」は含まれていません。「ただ聞いているだけじゃないか」だと思われる方も多いのですが、この「聞く」という行為が非常に重要なんですね。

聞くことに意味があるのか?

とはいえ、聞くことに意味があると言っても「ただ聞いてるだけ」という感覚になるのは否めません。

だからこそ「何かアドバイスをしてほしい」と思うわけですね。

確かにカウンセリングの料金は1回1万円前後するわけですから決して安い値段ではありません。

だから何か元をとりたい気持ちになるのも十分理解できます。

しかし、もしあなたが元をとりたいと思うのであれば敢えてアドバイスを求めないほうが良いです。

カウンセラーが「聞く」ことに意味があるのです。その意味を説明する前にそもそも、カウンセラーがアドバイスをすることに意味があるのか?

結論から言えば、意味がないんですね。

相談者はずっと悩みに悩んでカウンセリングを受けようと考えている人がほとんどです。

その間に自分なりに対処したこともあるでしょうし、もちろん、人によって「人に弱みを見せたくない」という理由で周りの人に相談しない人もいらっしゃったりするのも事実ですが、たいがいのケースが周りの友人や家族にアドバイスを求めたことだってあるはずなんですね。

それでもしっくりこなかったんです。つまり、人からアドバイスをされても解決できなかったわけですね。

そのような方がカウンセラーからのアドバイスを貰って劇的に解決できるのか?そんなことないんですよね。

カウンセリングを日本に広めた第一人者である河合隼雄先生の著書の中でこんなことが記していました。

「アドバイスされて改善する相談者はそもそもカウンセリングに来ていない」と。

「その手前で家族や友人にアドバイスされて改善している」と。

その通りだと思います。

アドバイスされて解決できていたら、その方の悩みというのは自分でなんとかできる悩みでもあるわけです。

そうじゃない方は、人からアドバイスされても変わりません。

なので、もしあなたが今カウンセリングを受けていて「ただ聞いてもらってるだけ」と思って不満を感じていて他のカウンセラーに代えようとしたとしても、他のカウンセラーも今のカウンセラーの態度とさほど変わらないのです。

実際、相談者にアドバイスをするとどうなるのか?

だいたいが「あーなるほど、でも~~」と自分なりにフィットしないようなアドバイス内容であれば受け入れることができないんですね。

逆に言えば、本人にフィットするようなアドバイスだと受け入れられるということです。

これはつまり、相談者自身に答えがあるということにほかなりませんよね。

カウンセラーが「聞く」ことによって、何が生まれるか。相談者本人で考えていることが整理されます。

そして、相談者本人が気づいていなかったようなことに次第に気づけていくんですね。

人間の心って無意識がほとんどだといわれています。

つまり自分で自分のことを知っているようで、知らないことが多いんですよ。

そして自分の悩みの解決の糸口はその無意識の中にあるのです。

カウンセラーが聞くことによって相談者本人が気づいていないような無意識の領域に入ることができてセッションを重ねるごとに相談者自身がどこに問題があるのか、気づくことができるようになるんですね。

わかりやすいように、あるケースを挙げて説明しましょう。Aさん35歳男性です。

今までバリバリと働いてきて結果も残してきました。

けれど最近仕事に対してのモチベーションが上がらず、「うつ病」かと思いカウンセリングに来室されました。

話を紐解いていくと、最近会社の体制が変わったことによって仕事がやりにくくなったことが語られたのですが、問題の本質は、Aさんはもともと独立志向があり、フリーランスになり自分の力で働きたいと考えていました。

しかも最近、個人に案件を貰えるようなこともあり真剣に考えていたのです。

しかし、Aさんは結婚もしていて、子どもいて、収入を安定させないといけません。

そのはざまで葛藤していたのです。

そのことにAさんは気づき、結局、Aさんは会社を辞めて独立しました。そこからは精神的にも調子が良くなり、カウンセリングは終結しました。

このケースでは、Aさんはフリーランスになろうかどうしようか葛藤していたのです。

そして苦しみの生み出していたのはその葛藤だったわけですね。

本人も気づかぬうちに、見て見ぬふりをしていたのです。

このように本人が気づいてないところで、葛藤を抱えていることが多くその葛藤が苦しみを生み出しているというわけですね。

このように、悩みの本質は実は相談者の中にあり、しかも自分自身が気づかない「無意識」の中の葛藤にあるということなのですね。

ですから、それに気づかないといけません。

そして気づいたらその葛藤をどう処理していくか、向き合わないといけないのです。

Aさんの例でもAさんは最終的には仕事を辞めてフリーランスになられたのもAさんの決断だったわけです。

つまり、最終的に答えを出すのは相談者です。カウンセラーはその作業をお手伝いするわけです。

まかり間違っても「あなたは今すぐに仕事を辞めて独立したほうがいい」みたいなことは言わないわけですね。

カウンセリングは時間がかかる

このように、カウンセリングはアドバイスをするものではなくて対話を通して、相談者の無意識の中の葛藤をひっぱりだしていく作業をお手伝いしていくことなんですね。

これには1回のセッションではできないんですよ。ある程度時間がかかります。

ある程度軽度な方であれば、5回前後か10回前後で解決できる人もいますが、しっかり腰を据えてやると30回~50回程度はかかると考えたほうが良いでしょう。カウンセリングというのは、自分と向き合う作業です。

それでもアドバイスを貰いたいと思うのであれば?

それでも、「やっぱりアドバイスが欲しい」と思われるのであれば担当のカウンセラーに聞いてみることをお勧めします。

ここで大事なことは「アドバイスが欲しい」と思うのはなぜなのか?について考えることなんです。

例えば、「自分は合理主義だからアドバイスを求めがち」だったりすることが理由かもしれません。

また、「アドバイスを貰うことで満足し、自分と向き合う機会を避けている」という場合もあります。

自分と向き合う作業はとてもしんどいものです。人によっては途中でカウンセリングを中断される人も少なくありません。

だからこそ表面的なアドバイスを貰うことで自分自身の本質に向き合わなくて済むように無意識のうちにしているのかもしれません。

このように、なぜ自分は「アドバイスを欲しい」と思うのだろうか?と考えることから自己理解がはじまります。

自分と向き合うとっかかりというわけですね。

自分の感情や行動と向き合うことが自己理解の第一歩ということなのです。

カウンセリングを受けてみませんか?

ここではカウンセリングはアドバイスをしないのか?について詳しく解説しました。今カウンセリングを受けようと思われている方は、是非カウンセリングについて理解したうえでカウンセリングを受けていただくとより有意義な時間を過ごせると思います。カウンセリングを受けたいとお考えの方や一度体験してみたい方は、是非一度カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者

丸田 英世

Heart Life代表・室長

<資格>

公認心理師[国家資格](No.7710) 臨床心理士(No.31071)

<所属学会>

日本臨床心理士会

<略歴>

横浜国立大学大学院臨床心理学専修卒業。卒業後、東京都市教育センターで発達に関する相談業務に従事。その後、神奈川県内の心療内科クリニックで心理士業務、東京都内心療内科・心理カウンセリングルームの心理士勤務を経て、2020年6月、渋谷・心理カウンセリングルーム「Heart Life~こころの悩み相談所~」を開業。2024年3月に「Heart Life~こころの悩み相談所~新宿店」を開業。

<公式SNS>

YouTubeアカウント:「心理カウンセラー【臨床心理士】がうつ病について語るCh」
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