大人の発達障害の種類や具体的な症状・診断方法・治療法などを徹底解説

子どものころは感じなかったものの、大人になってから「自分は周りとは違うのかも」「人に迷惑をかけてしまう」などを自覚する人が増えており、それらは大人の発達障害が原因となっているかもしれません。

とはいえ、大人の発達障害に対する知識の認知度は高くないため大人の発達障害を自覚できずに症状に苦しんでいるという方も多いのです。

そこで本記事では大人の発達障害を疑うべき症状や種類、具体的な症状、診断方法、治療法などについて詳しく解説します。

大人の発達障害とは

大人の発達障害は大人になってから発達障害の症状が発症するのではなく、生まれつき持っている先天的な脳の発達によって継続的に人間関係や社会生活において悪影響を及ぼしてしまう障害のことを指します。

発達障害は大人から発症するはありませんが、多様性に溢れた学校などの集団に属する子どもの期間において発達障害に気づくケースは多くなく、社会人として働くなかで周囲とは明らかに異なることが浮き彫りになり発達障害だと自覚するケースが多くなります。

そのため、大人になってから気づく発達障害であることから「大人の発達障害」という名前が付けられているのです。つまり、大人の発達障害は子どもの発達障害と同様にASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如・多動症)・LD(学習障害)という障害となります。

大人の発達障害を疑うべき症状

大人の発達障害にはさまざまな症状が見られますが、周囲と比べたときに以下の症状が明確にみられる場合は発達障害を疑うべきでしょう。

  • 興味関心が大きく偏っている
  • 物事へのこだわりが非常に強い
  • コミュニケーションが困難
  • 忘れ物が非常に多い
  • 集中力がない
  • 同じ間違いを繰り返す
  • 読み書きが苦手

周りの人と比べて上記のような症状が明確に見られる場合は発達障害の可能性がありますが、そもそもの考え方や脳の作りには個人差があるため、上記の内容に当てはまっていたとしても、必ずしも大人の発達障害であるとは限りません。

またポジティブ思考な人とネガティブ思考な人が同じ症状が見られる場合でもそれぞれが自分に対する評価が異なるため、発達障害を自覚できないこともあります。

このように大人の発達障害を自覚することは非常に難しいため、周囲の意見や周囲との差を感じた場合などはとりあえず大人の発達障害を疑って医師に相談することもひとつの手です。

大人の発達障害の種類

大人の発達障害にはさまざまな症状がありますが、大きく分類すると以下の3つの障害に分けることが可能です。

・ASD(自閉スペクトラム症)

・ADHD(注意欠如・多動症)

・LD(学習障害)

それぞれの大人の発達障害の種類について、以下で詳しく解説します。

大人の発達障害①:ASD(自閉スペクトラム症)

ASD(自閉スペクトラム症)は人間関係が苦手という特徴や物事に対して強いこだわりを持っているという特徴のある発達障害です。

強いこだわりを持っているため状況に応じて臨機応変に対応することができないことが多く、結果として悪意が無いにも関わらず相手を怒らせてしまったり、趣味に没頭してやるべきことができなかったりします。

このASDは1歳半ごろから診断することのできる発達障害ですが、子どものころは興味のあることに集中することが一般的に見られるため発達障害だと認識されることは少ないです。

ASDが疑われる具体的な例としては「まったく空気を読むことができない」「冗談を理解できない」などの対人面での特徴や、「生活パターンへの強いこだわり」「興味関心への偏りが激しい」などの物事に対してのこだわりなどが挙げられます。

また、ASDは女性に比べて男性のほうが2倍〜4倍ほど多いと言われており、大人になってから社内での人間関係やコミュニケーションがうまく取れないことから大人の発達障害を自覚するケースが多いです。

大人の発達障害②:ADHD(注意欠如・多動症)

ADHD(注意欠如・多動症)は注意力が散漫であったり順序や時間を守るのが苦手といった特徴のある発達障害です。

大人の発達障害のなかでもADHDは認知度の高い障害となっており、大人の発達障害以外の大人でも当てはまる人が多いことから見極めが難しいことも特徴として挙げられます。

しかし、ADHDの人は自己肯定感が周りに比べて低かったり、日常生活においてADHDの症状が悪い影響を与える場面が多いことや、うつ病・双極性障害・不安症などの精神疾患や、ASD・チック症などの発達障害を伴っていることが多いことなどから見分けることができます。

大人の発達障害③:LD(学習障害)

LD(学習障害)とは、知的発達に関しては障害はないものの、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論するなどの能力に困難が生じる発達障害です。

社会生活をするうえで文章を正確に読むこと、道筋を立てて文章を書くこと、近い未来を予測して行動することは大切な能力ですがLDの人はこれらの能力が低い傾向にあります。

そのため大人の発達障害のなかでも自覚症状を持ちやすいです。

またLDのすべての症状が現れるというケースは少なく、症状によって読字障害(ディスレクシア)・書字障害(ディスグラフィア)・算数障害(ディスカリキュリア)の3つに分類されます。

大人の発達障害による具体的な悪影響

大人の発達障害は対人関係や社会生活のさまざまな場面において悪影響を及ぼす可能性があります。ここでは、大人の発達障害による具体的な悪影響について詳しく解説します。

自身への悪影響

大人の発達障害においての自身への悪影響は主にビジネスにおける人間関係に悪影響を及ぼします。

具体的には仕事の優先順位が分からずに正しい順序で仕事を進めることができずに非効率になってしまい周囲の人よりも仕事を終わらせるための時間がかかってしまうことや、自分なりに精一杯仕事を進めているのにも関わらず上司からいつも叱られてしまう、社外の人と商談や会食などを行う場合に空気が読めないと言われてしまい険悪な雰囲気になってしまうなど、仕事をするうえでさまざまな悪影響を及ぼしてしまいます。

本人に大人の発達障害がない場合は”自分だけどうして”というネガティブな思考になってしまい、うつや精神疾患になってしまう場合もあるため、自分だけ仕事がうまく進められないと感じたら大人の発達障害を疑うべきです。

周囲への悪影響

大人の発達障害は仕事において周囲の人にも迷惑をかけてしまうことがあります。

具体的にはプロジェクトメンバーとして参加した場合に自分に割り振られた仕事をスムーズに進めることができずにプロジェクト全体の進行を遅らせてしまうことや、上司から迅速に対応するべき重要な仕事を振られたのにも関わらず重要度の低い仕事を優先かつ時間をかけて進めてしまうなど、大人の発達障害に気づかずに仕事をしてしまうと周囲の人に迷惑をかけてしまうこともあります。

社内の人間は対等なビジネスマンとして見ているため仕事に悪影響が出るだけではなく社内の人間関係を悪化させる原因になることもあります。

大人の発達障害の発見が遅くなる理由

先ほどもお伝えした通り、大人の発達障害は大人になってから発症するのではなく、先天的な脳の作りによるものとなっているため子どものころから発達障害なのですが、大人になってから発達障害を自覚することは非常に多いです。

その大きな理由になることは、子どものころや学校生活において発達障害の症状は「個性」として扱われることが多いことにあります。

自分の考え方とは大きく異なる人たちが集まる集団において大人の発達障害は「明らかに周囲と異なる」ことではないため、もちろん発達障害であることを疑うこともしません。

そのため無自覚に「自分は発達障害ではない」と思い込んで過ごしてしまうのです。

しかし、社会人になると仕事のミスが明らかに多かったりコミュニケーション能力が明らかに低いと感じるようになるため、大人になって初めて発達障害を自覚するのです。

大人の発達障害の診断方法

大人になってから発見された発達障害を診断してもらうためには、医療機関の中でも「精神科」もしくは「心療内科」に受診することが必要です。

ただし、大人の発達障害が診断の対象となったのは2000年〜2010年ごろであるため、現在でも大人の発達障害を診断の対象にしていない病院がある場合もあるため、事前に病院のホームページを確認したり、電話で問い合わせて大人の発達障害を診察してもらえるかどうかを確認することも大切です。

精神科・心療内科では患者の子どものころの家庭環境や心身の状況や仕事の環境や状況などのさまざまな視点から発達障害であるかどうかを診察してもらい、場合によっては「CT検査」で脳波を調べたり、「MRI」や「心理検査」、「血液検査」などによって検査することもあります。

このような大人の発達障害に対する診察はアメリカの精神医学会が発行している『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に基づいて診断されるため、病院や医師によって診断結果が異なることは基本的にありません。

大人の発達障害と医学的に認めることができるのは医療機関だけですので、少しでも大人の発達障害かもと思う場合は速やかに精神科もしくは心療内科に受診するようにしましょう。

大人の発達障害は保険適用内で診断可能か?

大人の発達障害の診断を精神科もしくは心療内科で行う場合は基本的に保険適用内で診察してもらうことができます。

ただし、保険診療を行っている医療機関であっても医師から必要性が認められないと判断された場合には保険適用外の診察となってしまう可能性もあります。

先ほどもお伝えした通り、大人の発達障害が正式に医療機関で扱われるようになってから歴史が短く、ほかの病気に比べると曖昧な部分もあるため、事前に電話などで問い合わせをすると安心して診察を受けることができるでしょう。

大人の発達障害の治療法

大人の発達障害は症状に合わせていくつかの治療法が存在します。

医療機関で行われる治療法は必要があると主治医が判断した場合の「薬物療法」や大人の発達障害による悪影響を減らす環境に身を移す「環境調整」などですが、それ以外にもカウンセリングやソーシャルスキルトレーニングなどの治療法も存在します。

カウンセリングは大人の発達障害による自分の特性を理解することで精神疾患を改善・予防することにも繋がりますし、ソーシャルスキルトレーニングでは対人関係において重要なことなどの日常生活における基本的なスキルを学ぶことができるため社会で生活しやすくなります。

このように大人の発達障害にはさまざまなアプローチ方法があるため、症状に合わせて適切な方法を選ぶことが大切です。

大人の発達障害と間違いやすい病気

大人の発達障害はほかの病気などと類似した症状があることも多いため、大人の発達障害ではなく何かしらの病気なのではないかと勘違いされることも多いです。具体的に大人の発達障害は以下のような病気に間違われることが多いです。

  • 精神障害
  • コミュニケーション障害
  • 愛着障害
  • パーソナリティ障害
  • HSP

いずれも大人の発達障害とは明確な違いがあるものの、専門的な知識を持っていない人が判断するのは難しいため、大人の発達障害の症状やそれに類似した症状が見られる場合には一度医師に相談してみることが正しい判断になります。

医師に相談して診断された結果をもとにしてカウンセリングやソーシャルスキルトレーニングを受けることで、さらに効果的な改善をすることができます。

まとめ

本記事では大人の発達障害を疑うべき症状や種類、具体的な症状、診断方法、治療法などについて詳しく解説しました。大人の発達障害がどのような症状なのか知らないと自覚することが難しいため、大人の発達障害による悩みをひとりで抱え込んでしまい、うつや精神疾患を患ってしまうケースが少なくありません。

そのため社会生活や対人関係において少しでもほかの人と明確に異なる部分がある場合は精神科や心療内科に相談してみることがおすすめです。

また、大人の発達障害と診断された場合には、必要に応じてカウンセリングやソーシャルスキルトレーニングについても検討してみてください。

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